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お知らせ
志茂田景樹さん次男タクシー業界本出版

カリスマ運転手年収800万の秘密
法人タクシー運転手として抜群の成績を挙げている下田大気さん(35)=東京都武蔵野市=が、ノウハウやエピソードをつづった本を出版した。
派手な衣装で知られる直木賞作家、志茂田景樹さん(72)の次男で、自らも金髪。
紆余曲折を経て就いた仕事だが、「高齢化しているタクシー運転手の仕事の魅力を伝え、若い仲間を増やしたい」と願いを込めた。
「タクシーほど気楽な商売は無い!」(光文社、千三百六十五円)は、運転手になって知ったタクシー業界の仕組みや客とのやりとりなどが満載だ。
ハンドルを握って二年半、日々ノートに書き留めたメモをまとめた。
下田さんは高校卒業後、役者や宝石販売、芸能事務所経営などの仕事をしてきたが、「みな中途半端だった」。日当の支給を受けながら、二種免許を取得できると知り、2009年10月にタクシー運転手になった。杉並交通に所属する。
遊び歩いて東京の裏道まで熟知した二十代の経験が生き、すぐに一日の営業収入が七万五千円超のトップ級運転手に。
歩合制のため、一ヶ月最大十三日の労働で、年収八百万円を稼ぐ。
「若い仲間増やしたい」「次は小説に挑む」
「空車の時間を限りなく減らす」のが下田さんの鉄則だ。
「ヒット(短距離乗車)を積み重ねれば、本塁打(長距離乗車)も自然に生まれる」。
著書で苦手な曜日はつくらない、平日深夜は確実に人のいる新宿、渋谷へ-など、蓄積するノウハウの具体例を示す。
「『松戸まで』とお客に言われたと思ったら『マクド(マクドナルド)』だった」という同僚の失敗談も。犯人尾行中の刑事や、血まみれの外国人が乗り込んできた体験談も掲載した。「客と結婚した例は?」「なぜLPガス?」「芸能人を乗せることは?」といった質問コーナーも巻末に設けた。「タクシー運転手は孤独なハンター。楽しまなくては」と強調する。下田さんのたどり着いた哲学ともいえる姿勢が全編ににじむ。
父から「読みやすい」と評価されたという。
「父には遠く及ばないが、作家という父の世界に入ってみたかった。
次はタクシー運転手が主人公の小説を書きたい」。新たな目的地が見えてきた。
東京新聞 2012年8月1日