物価上昇の波が容赦ない2022年の10月。
数多の要因が重なり家計を圧迫していることはもはや説明不要ですが、タクシー業界でもそれはやってきています。
公共交通機関の一端を担う重要な役割として確立すべく、煮え湯とまでは行きませんが、ご乗車いただくお客様にご理解を賜りたい…と心より願う今回のニュースです。
見出し
タクシー都内初乗り運賃11月から値上げ開始へ。
日本政府は10月7日に執り行われた物価問題に関する『関係閣僚会議』において、タクシー営業区域の東京特別区・武三交通圏(東京23区及び武蔵野市と三鷹市)の初乗り料金の値上げが認可されました。
これにより、東京都内の初乗り値上げ運賃は11月中旬より適用・開始される見通しとなります。
「420円」→「500円」へ。
注目の初乗り運賃ですが、現行の「420円」から「500円」へと値上げになります。
初乗り運賃の適用は以下の通りです。
▼距離制運賃の場合
現状初乗り距離:1.052km→今後:1.096km
加算時メーター:233m毎→今後:255m毎▼時間距離併用制の場合
現状:1分25秒毎に80円加算→今後:今後は1分35秒毎100円
ちなみに東京都内のタクシー料金が改定されるのは2007年以来、15年ぶりとなります。
背景は「避けられない事象」
今回のタクシー利用料金値上げの背景は、様々な「避けられない事象」が折り重なっていることが明らかとなっております。
順を追ってみてみましょう。
2020年から続く“コロナ禍…”
まずはこの2年間、新型コロナウイルスによるインバウンド需要が大幅に減少しました。
見込まれていた東京2020(オリンピック・パラリンピック)の延期、無観客開催など…。
そして首都圏のタクシー営業にとっては度重なる不運も起きました。
「緊急事態宣言」や「蔓延防止等重点措置」によって飲食店などの時短営業、そしてイベント関連の自粛。
これらによる影響によってタクシーを利用される機会がコロナ禍と比較すると間違いなく減少していることが言えます。
燃料費高騰など…
次に、タクシーの運行に重要な役割を果たす燃料が軒並み高騰しているのをご存じでしょうか?
LPガスはタクシーを走らせる際に欠かせない燃料で、一般乗用車でいうところの「ガソリン」です。
タクシー車両はほとんどの車両が石油由来の『LPガス』で走行します。
しかし、現在LPガスを生成している石油が高騰、円安の流れも強まり、東京都内に限らず全国のタクシー会社において喫緊の課題となっているのがこの「燃料費高騰問題」です。
社会情勢も混沌とする中、国土交通省は今年4月末に「燃料価格激変緩和対策事業」を立ち上げ、タクシー事業者を対象としたLPガス価格高騰分相当の補助金交付行うと発表しています。(詳しくは下記リンクへ)
感染対策防止による最新機器導入も
タクシー車両も、時代のニーズに合わせてアップロードしていかなくてはなりません。
当然ながら古い状態も車両を走行しては、運送業だけでなく接客業として成り立ちませんよね。
タクシー業界は「ユニバーサルデザイン(UD)タクシー」の導入をはじめ、新型コロナウイルス感染拡大防止で一気に機運が高まった「キャッシュレス化」、それに伴う最新機器端末の導入、配車アプリとの提携が急ピッチで進められています。そしてこの2年余りでは「感染・飛沫防止商材」の導入がほぼ完了に近い形となっています。
これらに対する投資も重なり、現行のタクシー運賃の水準で営業をしますと、タクシー事業者各社とも適切かつ継続的な経営を維持していくことが困難な状況が全国で発生しております。
そのため現在、都道府県のタクシー協会が国土交通省に嘆願書を提出する事態となっております。
揺れるユーザー心理
現場のタクシードライバーの声、そして普段から乗車されるお客様、そしてふとした時に乗車になられるお客様…いずれも“ユーザー心理”と言っても過言ではありません。
この層の皆さまを直撃する訳ですから、当然の如く歓迎のはずがありません。
現場では、どのような声が上がっているのでしょうか。
“タクシー離れ”進むのか
非常に危惧されるのがタクシーを利用するお客様の減少です。
単純に“値上げ”と聞くと、当然ながらお得感はないので街の印象は良いものではありません。
▼該当でのインタビューの様子。
「仕事で週に3~4回は利用します。値上げは正直キツイです…。」
「値上げはタクシーに限らずなので、今後は電車やバスを使おうかなと思ってます。」
「値上げ値上げで困るよなぁ~」▼タクシードライバーの声
「値下げしたと思ったら今度は値上げ…お客さん大丈夫かなぁ。。」
「逆に“ちょい乗り”は増えるんじゃないかな?ロング(長距離)が減りそうだね…。」
「頑張るしかないですよ。蓋開けたらあんまり関係ないんじゃないかな?」
ここにきて「都内タクシー営業収入」増加中
タクシーに関するニュースは日々蔓延っていますが、後ろ向きなニュースばかりと思ったら大間違いです。
ここにきて「都内タクシーの営業収入が増加している」のをご存じでしょうか?
しかもそれには、れっきとした根拠もあるのです。
タクシー配車アプリの大普及
東京都特別区武三交通圏の営業収入(日車営収)がコロナ禍以前の2019年に比べて増大しました。
(2022年6月輸送実績。2019年同月比0.7%増の4万9,777円)
要因は「早すぎた梅雨明けによって猛暑の中、多くのお客様にご利用頂いている」「突然のゲリラ豪雨によってタクシーの配車率も向上」など…自然界の恩恵もあったりと幾つか考えられるのですが、大きな根拠と言えるのは「タクシー配車アプリの普及」でありましょう。
全国的にもそうですが、タクシー配車アプリの利用・普及はこの1年で大きく向上し、国内最大手の「GO」を筆頭に「S.RIDE」「DiDi」「Uber Taxi」など各社でタクシー会社と提携しつつ、配車サービスを実施しております。
「GO」は都内60社で利用可能
特にタクシー配車アプリ「GO」ではCMや街頭広告の効果により、ダウンロード数も2022年9月28日時点で1000万ダウンロードを突破し、名実ともに国内トップのタクシー配車アプリの座に君臨しております。東京都全体でも60社以上で利用が可能となっております。
スマホ時代には欠かせないアプリケーションの中に「配車アプリ」をダウンロードしているお客様は今や珍しくなく、キャッシュレスもタクシー配車アプリと連携して行えるサービスも登場しています(「GO Pay」など)。
追い風必須“インバウンド復活”に期待
2022年10月11日をもって日本政府は新型コロナウイルス感染拡大の水際対策を緩和しました。
これにより再び日本に多くの外国人観光客が自由に往来できるようになり、各地の空港では早速多くの賑わいを見せています。
インバウンド復活は、タクシー業界にとっても願ってもない“追い風”です。
ある人によっては「失われた2年間」かもしれませんが、またある人によっては「対策を施し、我慢し続けた2年間」の方もいます。
タクシードライバーにとってはようやく待ちに待ったインバウンド復活ですので、今後に期待しましょう。
これから~Opinion~
飲食店も時短営業の規制がほぼ皆無となり、金曜日などは終電に乗り遅れたお客様が都心から郊外へとお送りするタクシードライバーも珍しくなくなりました。
先般、知り合いも虎ノ門から横浜まで10月初旬で概ね「1万5千円」という料金だったそうですが、タクシードライバーの方に『来月でしたら2万以上は行っていたかもしれませんよ』と言われたそうです。
しかしそれでも家が恋しい方にとっては「快適なタクシーに乗って帰れるなら…」と意外と金額には代えられないものです。
インターネットカフェやビジネスホテルも日によっては満席で繁華街では始発列車まで野宿するなんて方もいる中で、ポケットマネーを出しても「●●分~●時間短縮してお金出してでも帰りたい」というニーズにタクシーは応えるツールなのではないでしょうか。
もちろん、ニーズはそこだけに限った話ではありませんが、コロナ禍でタクシー業界は痛手を味わった分、可能性という面も非常に広がりを見せた期間だったのではないかと思います。
値上げはしてしまいますが、「需要は決して減ることはない」でしょう。