タクシーに乗車して、タクシードライバーから「今日は悪天候でしたので、この料金でお願いします」「今日は金曜日ですので、〇〇〇円でございます」と言ったやり取りをされた経験…ないですよね?
たとえば飲食店も、悪天候となれば客足はどうしても減ってしまうのは仕方ないことかもしれません。
ですが、そこをカバーするために「雨の日割引」だとか気の利いたことを行ったりします。
スーパーの“おつとめ品”もそうです。『このまま廃棄はあまりにももったいない…であれば値段を下げて少しでも利益を上げるために販売しよう。』商人の根性が垣間見えますよね。
さて、以前タクシーメディアでもお伝えした「ダイナミック・プライシング」をタクシー業界にも導入を検討するというお話ですが、今回は全国規模の大手タクシー会社がそれに準じた機能を導入し実証実験するというニュースが飛び込んでまいりました。
第一交通がタクシー運賃、GPS計測の実証実験を開始
福岡県北九州市に本社を構えるタクシー大手の第一交通産業(以下:第一交通)がこの度、GPSを使用して走行距離を計測後運賃を計算する「ソフトメーター」をNTT西日本などと共同開発しました。
2021年7月にも国内初の実用化へ向けて実証実験を開始する予定とのことです。
ダイナミック・プライシングを見据えて
この第一交通が開発したソフトメーターは、国土交通省が導入へ向けて検討を開始しているタクシー運賃を天気や曜日、客足などに応じて変動させる運賃変動制度「ダイナミック・プライシング」に必要不可欠となるシステムとなります。
ソフトメーターはAIと連動し、天候・曜日、その他季節の変わり目や催事など、人口の変動が著しく変化する情報からタクシーの需要を予測し、利用時には運賃を変動(上げ下げ)する設定が可能になります。
年内に実証実験を開始したいという国土交通省の発表もあり、第一交通はタクシー業界の先手を切って実証実験を開始することとなりました。
ソフトメーター×ダイナミック・プライシングはGPSがミソとなるわけです。
トンネル内でも大丈夫
一般的にはトンネルなどの場所ではGPSの電波が届きにくいイメージがありますよね?
しかし今回の「ソフトメーター」は、タクシーの走行距離が正確に計測可能というのが特徴のひとつです。
タクシーの車内にはタブレット端末を設置し、各キャッシュレス決済にも対応可能という形を取るとのこと。
さらにGPSのデータを基に割り出したタクシー運賃や、各地域の観光情報などを表示する予定です。
全国に営業所を持つ第一交通グループならではの強みが、タクシー1台に凝縮されるというわけです。
第一交通グループとは?
「大手タクシー会社」と呼ばれるタクシーは数知れず。ですが第一交通ほど全国的にもネームバリューが浸透しているタクシー会社はそうはないでしょう。実は第一交通は、蓋を開けてみるとタクシー事業だけではなく数多の事業を展開しており、さらには上場もしている文字通りの大手…
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「第一交通」はニューノーマルへ
第一交通は全国34都道府県にまたがるタクシー業界のビッグカンパニーです。
創業60年以上の老舗タクシー会社が初めて直面した「コロナ禍」でしたが、常に時代の先を見据えた取り組みを行っていることも特徴でしょう。
その一つが、新型コロナウイルスの収束を見据えた動きです。
第一交通では現在、「コロナ禍の収束を見据えて2000人のタクシードライバー増員」を目指しております。
感染拡大収束後には街での人の往来が激化となれば求職者も増加する…そのために先手を打って人材を確保しようという行動に出たのです。
タクシーの車両も、時代に併せてニューノーマル化する昨今、第一交通の取り組みもまさに「ニューノーマル」と言えしょう。
これから~Opinion~
タクシーは本来、『走行距離+乗車時間で運賃が確定する』するものですが、年内にもしかすると大きな改革に舵を切ることになるかもしれません。
今年2021年の1月15日に河野太郎規制改革担当大臣の会見を皮切りに、ダイナミック・プライシングの実現に際し、規制改革推進会議でソフトメーターの導入を目指す考えを示したことが多きな要因となっているようです。
ホスピタリティを重視するタクシードライバーにとって、タクシー需要の増加へ繋がる起爆剤になる反面、GPSのデータ収集、計測などに対応したメーターの開発は一筋縄ではいかないこともあり、お客様への理解が不可欠となりそうです。
タクシー業界内でも大きな反対論などは今のところなく、コロナ禍で落ち込んだ状況をダイナミック・プライシングによって業界全体で打破したい考えが垣間見えます。
もしうまく行けばタクシードライバーは「新たな営業方法」を手に入れたことになるでしょう。