数年前、十年前に比べると「天気予報」というものはかなりピンポイントで当たるようになったと思います。
人工衛星の進歩や気象予報士の進路予測の分析やAIで、近頃は「昨日のニュースでやってた天気予報当たんなかったよー!」…なんて会話もあまり聞かなくなったような気がします。
むしろ「1時間後に〇〇駅周辺は一時的に降るよ!」なんていうリアルタイムなものに変化していますよね。
そんな時代の流れにもタクシー業界は「料金」で変動していくべく、国土交通省主導のもと改革へ舵を切ることになりそうです。
見出し
国土交通省がタクシー変動運賃を検討開始
タクシー業界にもついに「ダイナミック・プライシング」の波が押し寄せてきた。コロナ禍の営収のカンフル剤となるか。
国土交通省は、タクシー運賃を天気や曜日、客足などに応じて変動させる新しい制度「ダイナミック・プライシング」を導入する検討に入りました。
この仕組みは、「タクシー需要が少ない際は運賃を下げ、逆に天候不良などのタクシー需要の多い際に上げる」というものです。例えば雨天時やプロ野球やJリーグなどの大規模なスポーツイベントの開催時、コンサートなどの興行終了後は大きく混雑をしますよね。
そこで、商品・サービスの価格を需要と供給のバランスによって変動させる価格戦略である「ダイナミック・プライシング」をタクシー業界でも導入するという話になった訳です。
終電後にタクシーを利用されるお客さまが多く見込まれる際は、タクシー運賃を高く設定。
その一方で、比較的お客さまの乗降が少ない平日日中等はは安くなる方向で検討しているとのことです。
年内にもタクシー実証実験を開始
国土交通省では、2021年度内に変動運賃の実証実験を始めるとしています。
この実証実験でタクシードライバーやタクシー会社の収入の変化や、お客様の利用状況を検証し、変動運賃の料金水準が適正であるかどうか等、「ダイナミック・プライシング」の概要を早期に示したいとしてます。
GPSデータに基づき走行距離を計算
GPSで変動運賃を確定するため、スマホでの事前予約が必須となる。おそらくこれで大きな混乱は避けられると見込まれる。「ダイナミック・プライシング」のタクシーでは、現在ほどんどのタクシー車両に搭載されている『走行距離+乗車時間で運賃が確定する』従来のメーターは使用をしません。
GPS(全地球測位システム)のデータに基づいて走行距離を計算する新メーターを導入するとのことです。
そのためお客さまはタクシーに乗車してからではなく、事前にスマホやタブレットなどで予約を完了させる必要があります。(その時点でタクシーの変動運賃が示される仕組みになっていますので「運賃がちょっと割高だなぁ…」と思ったら乗車はしなくても大丈夫です!)
過去には「規制緩和」へ前向きの会見も
今年の初旬には変動運賃に関して政府も意欲的な発言が飛んでいた。実現の日は果たして近いのだろうか。今回のタクシー変動運賃「ダイナミック・プライシング」の仕組みは、世界70カ国近くで取り入れられている「Uber(自家用車で乗客を運ぶ)」と同様であり、国土交通省やタクシー業界は今回の実証実験を成功させ、「対ライドシェア」へ向けてのサービス向上を図る狙いがあります。
また今年2021年の1月15日には、河野太郎規制改革担当大臣が記者会見にてタクシー運賃の規制緩和について「各需要に応じてタクシー運賃を変動させることができれば、タクシーの需要を喚起することができるのでは?」とタクシー料金の規制緩和に取り組む積極姿勢を見せ注目を集めていました。
他の公共交通機関では…
新幹線もついに半額…。考えてみると国内の航空会社も事前予約の「超割」を以前から行っていたことを思い出す。
「ダ…ダイナミック・プライ…?聞き慣れない横文字がまた出てきた…。」
そう嘆くタクシードライバーの皆さんも多いのではないでしょうか?この変動運賃、実はタクシー業界が画期的…という訳ではなく、公共交通機関を見渡してみると意外と他事業は既に先陣を切って行っていることがわかります。
例えば「バス」は「土日祝は200円」といった変動運賃を既に取り入れていたりするのを地元で見かけたことはありませんか?これも平日と土日祝の料金を変動させた「ダイナミック・プライシング」なのです。
また、鉄道をクローズアップしてみると、つい先日筆者が品川駅で見かけたのが「20日前までの予約で東北方面は新幹線半額!」という衝撃的な広告でした。
以前はよく所要で仙台へ出かけたりしていたので、正直「信じられない」の一言。
コロナ禍でなければ飛びついて乗ったであろうが、コロナ禍だからこそ新幹線も各地方への利用客減少というのもあり、長距離輸送が抱える経営状況も踏まえ、このような「ダイナミック・プライシング」を行ったのでしょう。
身近に見るダイナミック・プライシング
そして会社帰りのサラリーマン、或いはパート帰りの主婦の皆様の強い味方も、実は「ダイナミック・プライシング」の走りなんです。
そう、おつとめ品…つまり「見切り品」のことです。
生鮮食品売り場でお野菜やお肉、お刺身がスーパーマーケットの閉店近くになると異常に安く売られますよね?あれこそが変動運賃「ダイナミック・プライシング」の走りと言われています。
こうして考えると、逆に「今までタクシーにも変動運賃があったって不思議ではなかったのでは?」とさえ思えてきますよね。
整備に時間はかかるのか否や、タクシーも天候や災害、各種イベント、他の公共交通機関の遅延等に大きく左右される乗り物ですからね。
サービス認知の必要性
タクシーは余裕を持って配車する…ケースは実はなかなか無く、どちらかと言えば急いで配車をするシチュエーションが圧倒的に多い。事前予約と言えど「変動運賃なんて知らなかった」という事がないよう、ある程度広報活動を大々的に行うことを推奨したい。
トラブルや苦情防止の観点から、やはりタクシーのダイナミック・プライシングも、メディア等を通じた大々的な事前通達が必須となってくるのではないでしょうか。
東京都特別区や神奈川京浜地区など、これまで多くの地域がタクシーの料金改定を行ってきた節、今回のダイナミック・プライシングは他の公共交通機関の変動運賃と比べタクシーならではの環境下もあり、細分化が著しい点が特徴です。
スマホでの事前配車予約が必須な分、大きな混乱は避けられそうですが、認知の上でもコマーシャルを行っていくことが重要と考えます。
展望~a View~
利用されるお客様にとっても、タクシードライバーにとっても、そして交通機関を利用するすべての方にとって、タクシーのダイナミック・プライシングは快適なサービスとなることを願うばかりだ。
コロナ禍でタクシー業界の底上げが期待される反面、高齢の方や障がい者などの、「交通弱者」への影響が懸念されています。
また、担い手となるタクシードライバーへの影響も計り知れないものがあります。
交通弱者への早期の対応をタクシー業界だけではなく、国土交通省も今一度行うことが望まれます。
タクシードライバーにとっては体と稼ぎの天秤が釣り合うか否かの部分ですが、世はコロナ禍、正解のないご時世です。今は頭をフルスロットルにして、企業や政府の方針を待つだけでなく、タクシードライバー個々が波を起こしていくのも一つこの現世を生き抜く手段かもしれません。