コンクリートジャングル東京。
首都圏で働くタクシードライバーの皆さんは、それぞれが蓄積と経験で得た「近道」という名の武器の下、今日もお客様を快適に目的地まで運んでおります。無論タクシードライバーに転職したての方は順序通りに道を覚えるのが一番ですが、ある程度の道を感覚的に覚えてくれば、次のステージとして「近道」を探ってみたくなるのは自然なことでありましょう。
今回は東京特別区の『都心三区』の中でも名物的存在だった近道が、時代の流れにより消滅してしまうというちょっと驚きなニュースをお届けします。
東京港区の名物「天井低ガード」ついに一部消滅へ。
東京特別区タクシーライバーの名所、東京港区の「高輪橋架道橋下区道」の一部分が、まもなく役目を終え、第二東西連絡通路として再スタートすることがわかりました。すぐ北側に歩道付き2車線道路の「第二東西連絡道路(2031年度完成予定)」を新たに建設中のためとしています。
但し今現在、工事は進行中のため、「高輪橋架道橋下区道」の自動車の通行は不可となっており、名物だった「タクシー車両がスレスレに通る光景」はもう見ることが出来ません。
完成後は「第二東西連絡道路」に機能を切り替え、現在の架道橋下区道は役目を終えることとなります。
なお、5月10日からは西側部分が全面通行止めとなり、歩行者用通路は旧鉄道敷上に設けられた仮通路に切り替えられます。
※6月からはさらに北側の別の仮通路に切り替えるとのことです。
高輪ゲートウェイの開発工事の影響
高輪ゲートウェイ駅周辺の開発に伴い、周辺の工事は慌ただしくなっております。
山手線の49年ぶりの新駅として昨年2020年にオープンし、品川駅からわずか0.9kmという立地の高輪ゲートウェイ駅は将来的にも相当な発展が見込まれるのは目に見えていますが、今現在は開発途上の真っ只中のため、利用客もかなりまばらなのが印象的です。
高輪ゲートウェイ駅周辺では2024年度までに商業・宿泊施設、タワーマンションなどの建設を予定しており、来るべくリニア中央新幹線の開業を前に品川駅に隣接するターミナル駅として開発に力をいれております。
となれば将来的には公共交通機関の乗り入れも活発になるのが至極当然の成り行きで、タクシーの往来もこの先頻繁になることが予想される場所の1つとされています。
セダン車のみの独壇場だった
自称「提灯(行灯)殺し」、「首曲がりトンネル」とも言われたタクシードライバーの中では有名なトンネル。
実は筆者も以前、都内のタクシー会社へ取材を敢行させていただき、助手席にてそのトンネルの狭さを体感したことがあります。
同乗頂いたのはタクシードライバー歴実に30年以上という大ベテランの指導班長さんだったのですが、「これからちょっと面白い道をご案内します。」ということだったので何も分からずに助手席で視界を見渡してみると…
怖い…。っぶつかるゥ!!
と思わず声が出てしまいそうなくらいスレスレのガード下をタクシーが走って行きました…!。
確かに考えてみれば品川駅周辺の「山手線・京浜東北線・東海道線・東海道新幹線」が走行する線路を跨ぐ方法って、かなり限られていますよね。
新橋や有楽町まで行けば高架下でなんとかなりますが、品川~田町駅付近まではそうもいきません。
なのでタクシードライバーにとって品川駅周辺で営業を行う際、高輪口から港南口への貴重な経路だったという訳です。
JPNタクシーが主流となっている首都圏のタクシーですが、セダンタイプの車両にとってはまさに独壇場の“近道”だったわけです。
今回自動車の往来は消滅しましたが、ガード下の道路そのものは歩行者用通路としてしばらくは残るとのことです(地下歩行者専用通路は2026年度に完成予定)。
これから~Opinion~
時代の流れとともに名物的な道路が街の「アップデート」とともに失われつつあります。ただ、アップデートされるのは道路だけではなく、タクシー車両も同様。そしてタクシー会社も、そしてタクシードライバーも同様です。
また新たな道が生まれれば、どこかの道が空きだし、そして突然におかしな混み方をする場所が発生する…。
そこでまた頭を使って「この近道を使ってみてはどうか」や「たまには逆を行ってみよう」といった発想が生まれます。
近年はAI等の普及で営業がしやすくなったという声も聞く反面、時代についていけないという声もあるのも事実。どちらが正解かはここではさておいても、自分自身が運転した感覚・蓄積・経験が一番の武器であることは間違いありません。また新たな時代のスタートとして、次の「近道」を探すのも楽しみの一つではないでしょうか。