post_user
タクシーと類似した二種旅客業に「ハイヤー」という業態があるのをご存知でしょうか。
言葉では聞いたことはあるが、いまいち実態を掴めていない方も多いのではないかと思います。
でもなんとなく…「タクシーに比べて高級感がある？」「タクシーよりも敷居が高い」「タクシーとは別物」といったおぼろげな印象は出てくると思います。
ここでは、タクシーとハイヤーの違いや、ハイヤー乗務員のなり方について解説します。
見出し
ハイヤーとはどういう乗り物
「そもそも、タクシーも、ハイヤーも同じでは？」そうお考えの方も結構いらっしゃるのではないかと思いますが、実はそれ間違った解釈なのです！
確かにタクシー会社によっては「○○ハイヤーという会社名」であったりするため、少々エンドユーザーにはややこしいのは否めません。
では、タクシーではない「ハイヤー」とは一体、どういう乗り物なのでしょうか？
タクシーとハイヤーの見た目の違い
タクシー車両には黒一色、あるいは無線会社によって黄色やオレンジ色、緑色など、様々なボディカラーの車体が使われています。
東京都内もカラフルなデザインで走行する姿を昼夜目にしますよね。
車種もセダンタイプの車両から最新鋭のJPN TAXI(ジャパンタクシー)、ワンボックスカー、プリウスなど多岐に渡ります。
加えて、屋根の上には社名を記した行灯（アンドン）が装備され、ボディ各部にも社名が記されています。
一方、ハイヤーは、貫禄のある大柄な黒塗りの高級車を使用している場合が多く、なおかつタクシーに装備されているような行灯や車体各所の社名表記も見当たらないという違いがあります。
(正確にはドアに小さくマークが記されている事が多くあります。)
タクシーとハイヤーの運用方法の違い
タクシーとハイヤー。どちらもお客様をお乗せし、快適に目的地までお運びするということに変わりはないのですが、ふたを開けてみると業務体系や賃金も大きく変わってきます。
またタクシーとハイヤーでは仕事の特徴も似て非なる部分もあります。
それによって仕事の向き不向きが出やすいので、是非チェックしてみてください。
▼タクシー
- 流しや無線配車などで営業
- 運転時間が圧倒的に長い(但し隔日勤務は翌日休み)
- お客様は都度変動する
▼ハイヤー
- 完全予約制
- 運転時間より待機時間が長い
- お客様は付きっきりがほとんど
以上がタクシードライバーとハイヤー乗務員の大まかな違いです。
区域内で乗車距離で精算=タクシー
タクシーは、定められた営業認可地域内において、所定の乗り場などでの「客待ち」、街中を走行して乗車希望の客を見つける「流し営業」、電話やアプリなどでの依頼に基づく「無線配車」「配車アプリ」での営業を主におこないます。
運賃については、基本的に乗車した距離(時間を併用する場合もあり)に応じて精算します。
企業・利用者が申し込み=ハイヤー
一方、ハイヤーの場合は、ハイヤー専門会社、あるいはハイヤー部門を持つタクシー会社に、企業などの利用者側が事前に利用を申し込みますが、場合によっては申し込み審査や保証金が必要というケースもあります。
また、乗務員や車両を固定配置する専属契約を可能としている例もあります。
ハイヤーの利用料金については、基本的に営業所を出てから戻ってくるまでの全行程を課金対象として精算します。
実際のところ、企業の役員専用車として、あるいは葬儀社やゴルフ場の送迎用途として、専属契約を結んでハイヤーやドライバーを長期にわたって貸し切るケースも多く、タクシー運賃と比べるとかなり高めの料金設定となっています。
ハイヤーの賃金体系など
ハイヤー乗務員の賃金体系は、会社にもよりますが原則として基本給＋諸手当＋交通費(一部支給あり)、そして一般企業と同じく年2回程度の賞与月があります。
▼諸手当の内容は主に以下の通りです。
- 残業手当
- 家族手当
- 外国語手当
- 永年勤続表彰
- 無事故表彰制度
- その他各種手当
その他福利厚生面でも「退職金手当」「持ち株制度(大手企業系)」など充実面も多く、タクシードライバーと比較すると「完全歩合制」等と行った括りではない分、諸手当が手厚いのが特徴です。
タクシーとハイヤーの接客対応の違い
基本的にサービスに差があることは好ましいことではないのですが、どうしてもタクシーとハイヤーと比較になってしまうと、接遇面で大きく変化がある点もあります。
これは双方で利用される顧客ニーズにも合わせていく面も大きいですし、ハイヤーという「つきっきり」「お抱え」のお仕事の特性と言えます。
それではタクシーとハイヤーの接客対応の違いを見ていきましょう。
ドアサービス
多くのタクシーでは、後部座席左側を自動ドアとしており、運転席から開閉操作をおこないます。
一方、ハイヤーの場合は乗務員が車外に立ち、ドアの開け閉めや後方の安全確認もサポートする点が違います。
最近ではタクシーも大手企業がドアサービスも率先して行ったりとハイヤー顔負けの接客を行うようになりましが、ハイヤーではこれは通例です。
制服面
次に制服に着目してみましょう。乗務員が着用する制服も、ハイヤーのほうがより高級な印象を醸し出しているのが通例です。※ごく稀ですが個人で運営しているハイヤー会社や専属ドライバーですと、スーツをオーダーしたりするような事も。
タクシーと比べて割高な料金設定である点も踏まえると、タクシーはカジュアルな印象で、ハイヤーはハイクラス・高級な乗り物と言えるでしょう。
実際、運転経験が豊かで、なおかつビジネスマナーを心得た優秀な乗務員のみがハイヤー業務に求められます。
コミュニケーション能力
ハイヤー乗務員はタクシードライバーとは違い、多くのVIPを「丸一日」エスコートする大切なお仕事です。
ハイヤー乗務員に限ったことではありませんが、サービス業たるもの「お客様は神様」ではありませんが「主役はお客様」です。
決して踏み込んだ発言や、安易な言葉遣いなどはしてはいけません。
ただし、お客様から何度かご利用されているうちにハイヤー乗務員を気に入っていただき、以降ご指名を受ける…という話はこの業界、珍しいことではないようです。
そこからの縁で、別のハイヤー会社から声がかかったり…あるいは個人の専属ドライバーとして契約となったりと、実際にそういった転身話があるのも事実です。
見返りを求めてはいけませんが、小さな気配りが後に大きなものとなって返ってくるかもしれません。
コミュニケーション能力はハイヤー乗務員にとって必要不可欠な武器ですし、ハイヤー乗務員のお仕事も『自分自身を磨ける素晴らしい仕事である』ことは間違いありません。
ハイヤーの仕事内容とは？
タクシードライバーの一日は、営業所に行き、点呼→車両点検→出庫→帰庫→納金→車両点検・洗車→点呼と言った流れが通例です。
果たしてハイヤー乗務員はどうでしょうか。
出庫時はほぼタクシーと同じ
ハイヤー乗務員の出庫時は以下の通りです。
- 本日のスケジュールを確認。
- 測定器によるアルコールチェック。
- 点呼開始(運行管理者から本日の運行内容の指示)
- 点呼終了→車両点検簿・乗務員証を渡していきます。
- 車両点検(ウインカー、ブレーキ、ヘッドライト、バッテリー、エンジンオイルの点検など)
- 出庫
ここまではほぼタクシーと変わりはないと思います。
「待つのが仕事」がハイヤー
ハイヤー乗務員には原則として就業時間があります。
タクシードライバーほどの拘束時間を要さないものの、お客様によっては前後はするため、その折も常に車を回していること(待機)が基本となります。
そのため、タクシードライバーは「一度きりのお客様」をお乗せする一期一会の仕事なのに対し、ハイヤー乗務員は「1日を通して専属で運転をする」というも大きな違いです。
そのためハイヤーを利用されるお客様が１日中仕事・会議などの際は外で待つことがサービスの原則となります。
信頼は守秘義務から
ハイヤーを利用される方のほとんどは、大手企業などの役員や、政治家、代議士、医者、報道関係その他著名人やタレント、海外要人など多岐に渡りますが、いわゆる「VIP」と言われる方のケースが目立ちます。
よく“タクシーあるある”な話で「今日芸能人の〇〇を乗せた！」と仲間内で話したりもしますが、ハイヤーに関しては先方様の要望も含め、守秘義務がありますので迂闊にプライバシーを外部に話してはいけません。
すべては信頼関係で成り立っているのです。SNSで公開なんてもってのほかです。
安全運転以上の運転を
安全運転は当然ながら、ハイヤーは丁寧で正確な運転と規律を守ることによりお客様から絶大な安心感・信頼感を獲得してまいりました。
カーブの曲がり方・ハンドリング・ブレーキのかけ方ひとつにしても前方の車や数十メートル先の交差点の状況や信号機との兼ね合いも含め、技術を要すことは間違いありません。
例えば車酔いの激しいお客様に「今日は初めて乗ったけど、全然車が揺れなかった！運転がお上手なんですね！」と言われた日には嬉しくて、お金に代えがたい喜びになると思います。
ハイヤー乗務員へ転職をお考えの皆様、ここまで技術面を書きましたが、さほど難しく考えなくても心配いりません！
二種免許取得から接客、そして運転技術までハイヤー会社ではきめ細やかで丁寧な研修がございます。
働きやすさ対決！二輪自動車整備士（求人）VSハイヤー（求人）！働きやすい職種はどちら？【年収や仕事内容を比較して解説します】
帰庫後は設備利用も可能
帰庫時はやはりタクシー同様営業所に戻り、運行報告と測定器によるアルコールチェックを行います。
そしてハイヤー車両の洗車を念入りに行い、退社という流れになります。
なおハイヤー会社によっては大浴場、洗面所、仮眠室、休憩室、社員食堂、喫煙所が設備されており、非常に居心地がよく「実家に帰よりも楽」なんていうハイヤードライバーもいるほどです。
※ちなみにハイヤードライバーの約8割が所帯を持っていらっしゃる方とのことです。
ハイヤーの主な利用シーン5つ
ハイヤーは、タクシーとは違って手軽に駅で待っているものではありません。
完全予約制でニーズに応じた利用をすることが可能で、クオリティの高いサービスを施す対価として相応の料金が発生することは否めません。これはタクシーが公共交通機関なのに対してハイヤーは「個別輸送機関」であるからです。
では実際にハイヤーの具体的な利用シーンを見てみましょう。
働きやすさ対決！レンタカー店員（求人）VSハイヤー（求人）！働きやすい職種はどちら？【年収や仕事内容を比較して解説します】
冠婚葬祭の移動や送迎
ハイヤーは冠婚葬祭での利用は意外と目立ちます。
結婚式では新郎新婦の送迎、結婚式場から披露宴までの移動に利用されることも。
特別な衣装を身にまとい、一世一代の晴れ舞台となれば、それなりの送迎も必要となることでしょう。
その他近年では、お子様の出産時における自宅までの送迎サービスもハイヤーが行うこともあります。
出産を終えた新米ママを乗せて、静かな運転で高級車に乗ってリラックスして頂くのが目的です。
また、葬儀の折も霊柩車がハイヤー会社所属であったりすることも。二種免許が必須かつ、運転も細心の注意を払わなくてはいけない業務なので、やはり選抜されたドライバーが運転を行います。
官公庁への訪問時
官公庁へ訪問する際に会社役員や公務員などが利用する際、ハイヤーを利用します。
この場合、ハイヤーに限らず業務専属ドライバーとして委託されたドライバーが運転を行う場合もあります。また、政治関係者も特にハイヤーの利用は顕著です。
業務委託で会社専属や役員専属ドライバーの場合、車は白ナンバーのケースもあります。
要人・著名人の送迎
海外からの要人が来日した際や、著名人などのVIP待遇で出迎えるレベルの際、まずタクシー利用ではなく、ハイヤーの利用になります。過去には伊勢志摩サミット開催時や愛知万博など。
また記憶に新しい東京オリンピック・パラリンピックではコロナ禍でインバウンドが大きく減少し、タクシーの需要が減少しました。
しかし関係者や著名人の移動手段においてはハイヤーが必須となり、返って大会期間中はハイヤー乗務員が人材不足に陥ったため、各ハイヤー会社や企業専属ドライバーなどに声をかけてヘルプを頼んでいたというエピソードもあります。
会社役員の移動手段として
ハイヤーの利用方法として、企業の代表取締役をはじめ、役員レベルの会社員の送迎、移動手段として利用されることがあります。最も代表的なのは「銀行」でしょう。
2年前に放送されていたあの「倍返し」でおなじみの有名なドラマの中でも、敵役の常務(のちに取締役)が威風堂々とハイヤーで出勤していましたよね。
また休日などはプライベートもしくは接待のゴルフで〇〇カントリークラブなどへの送迎に利用することもあります。
働きやすさ対決！役員ドライバー（求人）VSハイヤー（求人）！働きやすい職種はどちら？【年収や仕事内容を比較して解説します】
観光案内などのおもてなし
ハイヤーは観光案内にも一役買っております。ハイヤーに乗って優雅な気分を味わいたい方は、一度体験してみてはいかがでしょうか？ハイヤー車両を備えているハイヤー・タクシー会社では観光ツアーを敢行しており、外国人観光客にも人気です。
その場合はタクシーの運賃相場(観光タクシー)と大差ないパック料金で組まれているケースが多くみられます。
東京でおすすめのハイヤー会社6選
東京都内のハイヤー会社でおすすめの会社はどこでしょうか？
実は大手に限らず小さなハイヤー会社は結構あります。
しかし、大手タクシー会社が運営しているハイヤー会社がやはり知名度や仕事内容的には非常に大きなウエイトを占めていることは間違いないでしょう。
日本交通
東京大手四社の中でも最大手に位置する日本交通は、創業91年という伝統を持つハイヤー・タクシー会社です。
そんな日本交通のハイヤー乗務員となると「安全運転の遵守」「健康管理の徹底」「接客品質の向上」「移動空間の維持」といったサービス面の向上を常に念頭に置き、エグゼクティブをストレスなくお出迎えする品質の高い取り組みを行っております。
また、海外からの要人に対応するため、英語、その他外国語の会話が可能な乗務員が在籍しています。
日本交通のハイヤー乗務員は狭き門で、採用試験の合格率はなんと20％となっております。
ハイヤーは運転技術は当然の持ち合わせになりますが、接遇のレベル、そしてハイヤーも地理試験があります。最終的には自社での面接を行い適正を確認したうえでの採用となります。
現在、日本交通では1,000名弱のハイヤー乗務員が在籍しております。
国際自動車
国際自動車のハイヤーは、自社のステップアップとしてはこの上ないステータスであります。
徹底した研修・教育で上質なホスピタリティをお客様へ提供すること。それが国際自動車の特徴です。ハイヤーは短期・中期・長期とニーズに合わせて契約することができます。
ハイヤー利用は送迎・観光など1日・半日といったスポッだけでなく、法人との専属契約も行っております。ドライバー派遣事業も行っております。
また、企業や報道関係からの信頼も厚く、お正月の箱根駅伝では大会関係者を乗せて走る姿を目にします。
大和自動車交通
ハイヤー・タクシー事業者として、また大手四社として唯一上場しているのが大和自動車交通です(東証二部)。
東京のハイヤーでも特にビジネスシーンにおいてスマートに活躍しています。官公庁や大手企業、報道関係、金融機関など多くの企業と取引があり、エグゼクティブをもてなします。
法人の役員車・社用車としての利用が主なメインとなります。
帝都自動車交通
帝都自動車交通のハイヤー事業では、空港送迎、ゴルフ利用、その他スポット利用など、様々なシーンに幅広く活躍しております。そして運行管理業務の委託も請け負っているのも特徴です。
状況に応じてフレキシブルに台数の予約をすることができ、最大100台以上の予約も可能です。
東京リムジン
東京リムジンは、1都3県にタクシー営業所を持つ大手タクシー会社「飛鳥交通」が運営する自社ハイヤー事業部です。
どのハイヤー会社も等しく同じとは思いますが、特に東京リムジンでは「乗務員及びスタッフ全員に守秘義務を徹底」しており、ハイヤーの車内通話は決して外部に流出させないという管理体制を整えております。
これは「お客様の安全を何よりも第一に」という東京リムジンのモットーにおいてサービスの品質を高めているからに他なりません。
Uber Black(東京・京都)
アメリカ発症の世界最大級のライドシェア企業。日本国内ではUber EatsやUber Taxiが有名ですが、Uberにもリムジンがあるのです。それが「Uber Black」です。
海外ではイギリスのロンドンやアメリカのロサンゼルスで導入がスタート。日本国内でも現在、東京と京都といったインバウンド現象濃厚な地域で利用をスタートさせています。
空港送迎や4人以上の旅行で利用すると便利です。
Uber同様、配車アプリで呼び出すことができるハイヤーらしからぬ画期的なシステムです。
操作方法も通常のUberページに「Black」を選択するかどうかなので非常に簡単です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ハイヤー乗務員のなり方として押さえておくべきポイントですが、実際のハイヤー乗務員や現場のハイヤー乗務員出身の人事担当の方にも伺い、技術面も含めて非常に現実性の高い情報であると思います。
ハイヤー乗務員に転職された際はまず、日頃から安全運転のみならず接遇の向上を強く意識して業務に励むことも大切です。
