町には、タクシー会社が運営する「法人タクシー」だけでなく、個人事業者が運営する「個人タクシー」もたくさん走っています。この個人タクシーですが、誰でも気軽に開業できるわけではないということをご存知でしょうか?
この記事は2020年11月に更新されました。
・嘱託乗務員/定時制乗務員についての注意
見出し
資金や試験をクリアすれば個人タクシーが開業できるわけではない
タクシー会社に勤務する、ごく一般的なタクシードライバーとして従事する際にも、いわゆる二種免許の取得は必須条件です。加えて、東京・大阪・神奈川の大都市圏においては、地理試験をクリアすることも必須条件となります。このようなハードルをクリアしてようやく法人タクシーの運転手になれるわけですが、一方で、個人タクシーを開業は資金さえあれば、あるいは何らかの試験を受けて合格しさえすれば、即座に個人タクシーを開業できるというものではありません。
経験年数がカギを握る個人タクシーの開業要件
個人タクシーを開業するために必要な要件として、旅客運送に携わった運転経験に関する規定があります。この規定は年齢によって区分されています。たとえば、申請者が40歳以上65歳未満の場合の規定を要約すると、
「過去(申請日以前)25年間のうち、職業ドライバー経験が10年以上」
「旅客運送以外の職業ドライバー(貨物トラックや自家用バスなど)の経験年数は50%として計算」
「申請する営業区域内で、過去3年以内に2年以上、タクシーあるいはハイヤーを運転する職業ドライバーの経験がある」
といった点が申請要件となっています。なお、65歳を超えると、個人タクシーの開業申請そのものができなくなる点にも留意しておく必要があります。
若い時期から個人タクシー開業を視野に入れるのがよい
個人タクシーには、法人タクシーに勤務するドライバーにはないメリットがあります。通常の法人タクシーの場合、売上の5~6割程度がドライバーの収入となるのに対し、個人タクシーの場合は、売上のすべてが収入となります。
もちろん、タクシー車両の調達や整備コスト、さらには燃料代や保険代などもすべて会社が負担するという点では、法人タクシーの勤務に大きなメリットがあります。しかし、売上金額を総取りできるという点は、やはり個人タクシーの最大のメリットと言えます。加えて、高齢ドライバーにとって、法人タクシーで主流の隔日勤務は体力的に厳しいものですが、個人タクシーの場合は勤務時間を自分自身で決められることから、体力面のハンデも軽減できます。
できるだけ若い時期から、将来の個人タクシー開業を視野に入れて日々の乗務に励むことにより、早めの個人タクシー開業へとつなげることができます。「思い立ったが吉日」と考え、今すぐにタクシー会社への就職を真剣に検討するのも、ひとつの有力な選択肢と言えるでしょう。
副業をしながら個人タクシーの開業を目指す
長い職業ドライバー経験が必要な個人タクシー。若い時期から目指す場合は、副業が出来るタクシー会社に所属し将来的な個人タクシーと、その他自営業などの開業も含めて視野に入れ、幅広い選択肢を選べるようにしておくことも良いでしょう。
副業やWワークを認めているタクシー会社の例として、ふじ交通有限会社の求人を見てみましょう。
ふじ交通では、実際になどの収入が不安定な職業で働きながら、タクシードライバーとしても働いている社員が複数在籍しています。週1~2乗務タクシードライバーをして、他の日に副業を行うパターンとなります。※この場合は、タクシードライバーを副業として考え、ほかが本業のケース。
・タクシードライバーを本業にして週1程度の副業を行う
上記の例とは逆に、タクシードライバーを本業にしてその他の選択肢である自営業を週1程度行う事で「将来的な個人タクシーの開業」と「そのほかの自営業」両方の選択肢を作る事が可能です。特に、年齢が若い方については多くの選択肢を作っておくことで、片方が上手く行かなかった場合でもスムーズに移行する事が出来るのでオススメです。
また、ふじ交通では将来的に個人タクシーを目指している方をバックアップする制度があります。副業で将来の保険をかけながら、本業のタクシードライバーで個人タクシーを目指したい方は検討しても良いでしょう。
副業や定時制などの勤務が運転経験の要件に該当するか
タクシー会社によっては、正社員以外の雇用形態(嘱託乗務員・定時制乗務員など)でも募集を行っています。タクシードライバーを本業にする場合は問題ありませんが、タクシードライバーを副業として(週1~2程度)勤務する場合は、個人タクシーの開業要件に当てはまらないケースがあるので注意しましょう。
- 定年後、定時制乗務員、嘱託乗務員として雇用された場合、運転経歴として認められるか。 ~定時制乗務員・嘱託乗務員について~
- 運送事業においてアルバイト運転者、日雇い等が関係法令に抵触するものであることから定時制乗務員・嘱託乗務員の雇用にあたっては、道路運送法、労働基準法、最低賃金法等関係法令の規定に基づき適正に管理雇用されなければならない。
したがって、基本的には運転経歴の挙証において通常の乗務員と同様の添付が可能となるものであり、運転経歴としての期間については個別に判断することとなる。
ただし、定時制や嘱託の場合、各運転者と事業者の雇用形態により健康保険及ぴ厚生年金保険が適用されるかどうかは当局では確実な判断が出来ないことから、社会保険未加入の場合で、定時制の場合は会社の定時制乗務員に適用する就業規則及ぴ雇用契約書、嘱託の場合は会社の就業規則及び雇用契約書をそれぞれ挙証に加えていただき当局はそれらを総合的に勘案し個別に判断する。引用:日個連 東京都営業組合 運転経歴について◆ 運転経歴関係のQ&A ◆より
運転経歴にかかる資料として「乗務員(運転者)台帳の写」や「社会保険の加入期間がわかるもの」などの提出が必要となります。上記を見ると嘱託乗務員・定時制乗務員の場合は「総合的に勘案し個別に判断する」ことがあると、明記されています。
このことから、社会保険の加入が運転経験として計算される一つの目安であるといえます。
嘱託乗務員・定時制乗務員として雇用された場合は、勤務日数などにより社会保険の加入とならないケースもあるので、個人タクシーの運転経験の要件を満たさない可能性があります。
そうならない様に、自分が希望している働き方が運転経験として計算されるか予め把握しておきましょう。
まとめ
様々な魅力がある個人タクシー。タクシードライバーは自由度が高い職業なので、その他の選択肢も多数作る事が出来ます。
個人タクシーを目指している方は、選択肢を多くしておくことも重要ですが、肝心な個人タクシーの開業要件を満たすことが出来ない…という事にならない様に、事前に確認しておくことが大切です。