タクシーは、あらかじめ運行ルートが決まっている路線バスや鉄道などとは異なり、乗客が指示する任意の目的地まで運ぶのが仕事です。ルートや乗客が常に一定ではないという特性ゆえ、思わぬ交通違反を犯してしまう危険性が潜んでいます。
乗客の指示や要求が交通違反にならないかを見極める
たとえば、タクシーに乗ってすぐの乗客から、「次の交差点を右折して」と指示されることがあります。その際、道路によっては、交差点の手前から進行方向別通行区分(右折専用・直進専用などのレーン分け)があり、しかも区分をまたぐ走行を禁ずる表示(はみ出し禁止)がなされている場合があります。それを無視し区分をまたいで右折レーンに行くと、交通違反となります。
また、Uターン禁止の道路にもかかわらず、Uターンするように乗客から指示を受ける事例や、駐停車禁止の場所で客を乗せてしまうケース、先を急いでいるからと制限速度オーバーの危険な走行を強く要求されるといった局面もあります。このほかにも、危険回避のため自動車が通ってはいけない時間帯が定められている道路(商店街やスクールゾーンなど)を通るように要求されるケースもあります。
乗客から指示や要求があった場合には、それが交通違反に該当しないかを即座に見極め、もし違反になる場合には、やんわりとお断りするようにしましょう。
人身事故の際に生じる法規違反にも留意しておく
人身事故の際に生じる交通違反にも留意しておく必要があります。相手方の負傷の程度や、自身の過失の度合いによっても変わりますが、長期間の免許停止あるいは、最悪の場合は免許取り消しとなる場合があります。また、相手方の救護や警察への通報をせずに現場を立ち去った場合は、いわゆるひき逃げの扱いとなり、一発で免許取り消し(しかも免許再取得の欠格期間が3年)となります。
事故の際の他の違反(信号無視や速度違反など)や、過去に検挙された違反の累積点数との合算によって、免許再取得の欠格期間がさらに延びる場合があります。このような処分が下ると、タクシー運転手という職業を続けるのは事実上困難な状況に陥ってしまいます。
運転手の違反によってタクシー会社が迷惑をこうむる場合も
交通違反によって検挙されると、運転手自身の運転履歴に傷がつくだけでなく、違反の内容によっては、所属するタクシー会社の安全管理体制や危険回避策の不備といった管理責任も問われることになります。
たとえば、制限速度を違反し検挙されると、警察からタクシー会社の監督省庁である国土交通省に連絡が入り、違反の累積度合いによって、監査が入ったり、減車などの行政処分が下されたりする場合があります。そういった点にも留意し、日頃から規則を守った安全運転に努めるようにしましょう。