見出し
全国営業収入データで見たタクシー業界の現状と今後
新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって観光や宿泊、イベントや外食など、人々が外出しないと経済が回らないサービス業が大打撃を受けているのは言うまでもないですね。タクシードライバーの収入は歩合制がほとんどなので、街から乗客が減ってしまえば収入にも大きく反映されてしまいます。
「今のタクシーの収入はどうなの?」「タクシー業界の今後は?」
2020年、コロナ禍からウィズコロナ時代へと国民の意識も変わりつつある今、タクシー業界の疑問や不安を紐解くべく、弊社で集めた「2020年各エリアのタクシー営業収入データ」をもとにタクシー業界の現状と今後についてまとめてみました。※データは東京交通新聞で掲載しているデータとなります。
この記事は以下のデータをもとに作成しています。
・コロナ禍の影響を受けていない3月の営業収入データ(正確には3月中旬から影響を受け始めました)
・緊急事態宣言で外出を控えることとなった4月5月6月の営業収入データ。コロナ禍の長い3ヶ月間ですね。
・回復期として想定される7月8月の営業収入データ
2020年コロナ禍においてのタクシー営業収入データから分かること
それでは実際のデータを図でお見せしながら解説していきます。
東京特別区の6ヶ月の売り上げの推移
東京特別区(都内23区、武蔵野市、三鷹市)の2020年4月~6月の売り上げの推移をまとめてみました。コロナの影響を抜きにした場合、東京特別区のタクシー1台あたりにおける1日の平均営業収入は約5万円前後と言われています。
それに比べ、緊急事態宣言が発表された2020年4月の都内特別区エリアのタクシー1台あたりにおける1日の平均営業収入は¥22,511と通常の約半分まで落ち込みました。5月の平均営収も¥30,608とまだまだ厳しい状況下。
6月7月の平均営収は35,000円前後になっており、少しずつ回復はしていますが以前の売り上げに比べるとまだまだ厳しい状況が続いているのが現状です。
東京都下、埼玉、神奈川、千葉エリアの売り上げの推移
続いて東京都下、埼玉、神奈川、千葉の2020年4月~6月のデータを見てみましょう。
4月の多摩地区エリアのタクシー1台あたりにおける1日の平均営業収入は¥23,619。神奈川の京浜地区は同じくらいの金額で¥23,312。埼玉エリアは¥21,403。千葉エリアにおいては¥18,503まで落ち込んでいます。いずれも前年同月比にして平均6割程度まで下落。しかし、東京都内23区の売り上げと比べてみるとさほど差が無くなっているのが見受けられます。
7月の営収データで見る各エリアのタクシーの比較
上記のデータから見て分かる通り、東京特別区は全体営業収入で言えば依然、全国一位を保っています。しかし、7月のタクシー1台あたりの1日の営業収入を見てみると東京都下や埼玉、神奈川、千葉エリアが東京特別区に次ぐ勢いを見せていることが判明。多摩地区、神奈川の京浜地区に関しては東京特別区を上回っています!
地方エリアは収入が大幅に減少。回復力は…?
一方、観光客をターゲットとしていた山梨など地方エリアのタクシー営業収入を見てみると8000円代まで下落。かなり厳しい状況が続いているようです。最初にも書いた通り、タクシーは乗客が減ってしまえばお給料にも大きく影響します。この収入では生活が苦しくなってしまいますね。しかしタクシーの良いところは、働き方を自分で調整しやすい事が挙げられると思います。そのため副業や掛け持ちで働くタクシードライバーも多いのが事実です。(会社によって副業不可の場合もあり)
例えば、地方で農業を営みながら仕事が少ない時期にだけタクシー乗務をしている方や、夢を追いかける傍らタクシードライバーの顔を持つ方など。今後、地方のタクシーはそんな副業の動きが強まっていくのではないかと考えられます。
▼副業に関しての詳しい記事はこちら!
コロナ禍ではほぼすべてのエリアが1/2の落ち込みとなり、もともと売上が少ない地方エリアに関しては絶望的とも言える数字が見受けられました。しかし、東京を除くGOTOキャンペーン等から地方は回復の兆しを見せています。都内をのぞくエリアではほぼ、2020年3月の水準までに回復しました。
「東京特別区のタクシーなら稼げる」という常識が覆される!?
タクシーに詳しい人なら「東京特別区が全国で一番稼げる」というのは今や常識となっています。それもそのはず、東京は面積が小さく人口密度が非常に高いのが特徴で、世界の都市の中でも最大の人口と言われています。国内外から多くの人が集まるため、タクシーを利用したいお客様が見つかりやすい地域なのです。
しかし、新型コロナウイルスの影響により東京都内から人が激減。東京特別区のタクシーの売り上げは減少しました。2020年6月以降は回復傾向にありますが、タクシー一台あたりの営業収入は東京都下、埼玉、神奈川、千葉エリアもさほど変わらない金額となっていることが分かりました。2020年ウィズコロナ時代、私たち国民の生活が大きく変わったように、「東京特別区のタクシーは稼げる」という常識が覆されようとしているのかもしれません。
タクシー業界、今後の回復力に期待。生き残るには?
東京特別区以外のエリアが回復の兆しを見せていることが分かりましたが、10月からは東京都民もGOTOキャンペーンの対象になると発表され、タクシー利用者数の増加が見込めるのではないかと思います。コロナの影響により売り上げが下がっているとはいえ、平均的に見ていくと東京のタクシーが一番の売上高であることに変わりはありません。
また、平均の売り上げが下がると全てのタクシードライバーが稼げなくなってしまうのかと言われるとそうではありません。このコロナ禍において「やる気がある人とやる気のない人」で売り上げの差が大きく開いているそうです。お客さんが減っているから…と弱気になっているばかりでは収入は付いてきませんね。今までとは違うルートで営業をしてみたり、無線の配車依頼を積極的に取ったり、「こんな時期でもどうやったら稼ぐことができるのか?」という向上心を持ってタクシーの乗務に挑むことで自ずと道が見えてくるのではないでしょうか。
そしてタクシーは「満員電車のようなすし詰め状態がない」「いつでも窓を開けて換気できる」などの理由から三密を避けて移動できる最適な公共交通機関であると言えます。
今後はさらにタクシーを利用する人が増えることを願い、タクシー業界全体の景気回復に期待したいですね。