子どもを狙った悪質な犯罪が多発している昨今、社会全体が一体となって協力することで、犯罪や迷子などのトラブルから子どもたちを守ろうという取り組みがおこなわれています。
「こども110番」展開の背景
子どもが不審者からしつこくつきまとわれる、連れ去られそうになるといった未遂事案や、実際に殴られるなどの被害に遭ってしまう既遂事案が多発しています。
このような緊急のトラブルの避難場所や通報場所としては、警察の施設(警察署・交番・駐在所)が重要な役割を担っています。但し、巡回中などで警察官が不在の場合もありますし、そもそも警察所まで遠い、あるいは子どもが現場からの最寄りの交番の場所を把握していないケースもありえます。
もしも、子どもが遠慮なく助けを求めて駆け込める場所が近くにない場合には、さらなる事態の悪化につながる恐れがあります。そういった点を鑑み、全国の警察や自治体、さまざまな事業者や地域のボランティアなどの連携により、子ども(概ね18歳以下を想定)を対象とした、いわば「緊急避難シェルター」となる仕組みとして「こども110番」が運営されています。
さまざまな「こども110番」
こども110番には、いくつかの形態があります。
最も知られているのは「こども110番の家」です。これは、趣旨に賛同するボランティア宅に「こども110番」と明記したステッカーや旗を普段から掲出しておくものです。通学路沿いや子どもが住む住宅地域などにステッカーや旗が複数掲げられていることで、それらが子どもの記憶に留まり、もしものときには「あのお家に行けば助けてもらえる」と思い出してもらうことにつながります。
また、運輸事業者や地方自治体が「動くこども110番」にも取り組んでいます。路線バスや役所の公用車にステッカーを掲出することで、万が一の際の有力な避難場所となることが期待されています。そして、タクシーも、こども110番を展開していることをご存じでしょうか。
タクシーも「こども110番」を実践
タクシー業界では、東京では東京ハイヤー・タクシー協会、関西では阪急タクシーなどが「タクシーこども110番」として取り組みに参加しています。
現在までに、全国の多くのタクシー協会が同様の取り組みを実践しています。万が一のトラブルの際の活動内容として、1つ目は子どもの保護です。子どもを車内に保護し落ち着かせた後、状況を聞き取ります。2つ目は警察への通報です。3つ目は、警察から指示を仰ぎ、安全な場所に移動する、怪我がある場合は応急処置をする、警察署や病院まで送り届けるといった、安全の確保です。
予約センターやGPS、非常通報システムをつかったタクシーならではの方法により、さまざまな役割が期待されています。タクシーこども110番に取り組んでいるタクシーの車体には、対象車両であることが分かるステッカーを貼付しています。このステッカーは東京圏では警視庁のマスコットキャラクターぴーぽくん、関西ではおなじみの黄色いステッカーなので、子どもが見てすぐわかるようになっています。