業界ニュースをラジオ感覚で視聴できるようになりました。
タクシー=お客様を目的地まで安心安全快適に送迎する…。
近年そんな定説めいた話に、多様化の波が押し寄せております。
タクシーには、「移動手段」として幾重にも可能性があるというのです。
新型コロナウイルスが猛威を振るう中、世の中は「外出自粛」ムード一色。
それでもタクシー業界に吹き荒れた逆風は、返って新たな可能性を見出す
きっかけにもなり得そうな様相を呈しております。
それは「お客様をお乗せすることだけではない」ということです。
外出自粛で増えるタクシーの新たな需要、タクシードライバーのお仕事が持つ
可能性をさぐりましょう。
見出し
増加の背景
タクシーの新たな需要は増える背景には、時代の流れが大きく関係しております。
いままでは、送迎だけにその役割を果たしていたタクシーですが、地域に住む人々の
ニーズだけでなく、時代背景、そして時には社会情勢までもが大きく影響すると
言っも過言ではありません。
タクシーの貨客混載や運搬はNGだった
タクシーの貨客混載は以前、「道路運送法」に違反する違法行為であり、
『タクシーは旅客運送に特化』するという義務があったため、貨物自動車運送事業とは
完全に区別化をされていました。
しかし2017年、国土交通省は「自動車運送業の生産性向上プラン」を発表し「貨客混載」の
検討を本格的に開始。その中には「タクシーは貨物自動車運送事業の許可を取得すれば荷物を
運ぶことを可能とする」と記されていました。
ただし「過疎地域に限る」という形で記されており、通常の市区町村では現実的な活用が
見込めないという声がありました。
どうやら今回取り組みを行っているタクシー会社は「運輸局」に許可を得て
行っているようですが、このような社会情勢なので規制緩和をさらに検討して
みてはどうかと考えます。
物流を止めてしまっては、さすがに国が回りません。
緊急事態ではあるのでタクシー業界の、そしてタクシードライバーの腕の
見せどころではないでしょうか。(救援事業として許可を得ているケース有。)
また、この度の影響を受けて、国土交通省は特例として「タクシー事業者に対し
飲食店からの料理配送の受託を認める」方針を決定しました。
タクシーが料理配送 新型コロナで特例―赤羽国交相表明
赤羽一嘉国土交通相は4月21日の閣議後記者会見で、タクシー事業者に対し、飲食店からの料理配送の受託を特例的に認める方針を明らかにした。21日中にも地方運輸局などに通知する。新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛で需要が落ち込んでいるタクシー業界を支えるとともに、店内飲食を休止し、持ち帰りを始めた飲食店の配送ニーズに対応する。5月13日まで実施する。各運輸局が事業者から申請を受け付け、数日以内に許可を出す。
配送料などはタクシー事業者と飲食店が個別に交渉して決めてもらう。客と飲食料品を同時に運ぶことは認めない。【引用:2020年4月21日 時事通信社(時事ドットコム)】
新型コロナウイルスの影響
言うまでもなく、世界的な大問題で、5年~10年後には学校の教科書にも載るレベルの
非常事態の真っ只中に我々は今おります。
感染症予防対策として「3つの密(密閉、密集、密接)」を厳守すべく政府の「緊急事態宣言」を
全国に発令。当初首都圏やその近辺、一部の地方都市のみでしたら、より感染症予防対策の
強化をはかるため、外出自粛を要請しています。(2020年4月現在)
そのため、タクシーを利用するお客様も減少しており、「移動」で利用する今までの
営業スタイルでは通用しなくなってきているのではという見方もあります。
※ただし、換気の面や消毒、移動の際の安全面を考えると公共交通機関としてのタクシーは
非常に優れております。
高齢化の中で
タクシーというのは「福祉的な要素」が近いと言える業種ではないでしょうか?
日本が高齢化社会になればなるほどその需要は高くなる一方で、その証拠に
タクシー車両も年々進化を遂げております。
ユニバーサルデザインタクシーとしてタクシー会社にも、介護福祉を目的とした
タクシーを備えている営業所や、最新次世代タクシーの「JPN TAXI」も同じく
ユニバーサルデザインタクシーの要素を備えております。
そしてタクシー業界でも「ユニバーサルドライバー研修(UD研修)」が積極的に
行われるようになっており、地域によってはタクシードライバーとして勤務する
際、上記の「JPN TAXI」の普及もあり、研修時の必須項目となっております。
運送業とタクシードライバーの『人手不足』を緩和
タクシーと運送業、共に抱える悩みといえば「深刻な人手不足」。
どちらかのバランスが崩れてもいけませんし、無くてはならない存在です。
そんな中で宅配業者と、タクシー会社の協力で、地方の過疎地を中心に荷物の
配送、集荷を実施。数年前から実証実験が実施されている地域もあるので
今後大きく展開することを期待したいものです。
全国の動き
外出自粛で増えるタクシーの新たな需要として、タクシーならではの特性を生かした
サービスを、二種旅客業というタクシー本来のもつ公共交通機関の役割だけでなく、
運送面も踏まえた可能性に注目が集まっております。
増える『買い物代行サービス』
外出自粛で増えるタクシーの新たな需要として、今注目を集めるのがタクシーの
「買い物代行」です。タクシー業界では以前から高齢者の方向けの「買い物代行サービス」を
行っている会社も多くみられましたが、この度の新型コロナウイルスの流行を受け、外出自粛が
全国に広がりを見せる中で老若男女問わずに、このサービスが注目されるようになりました。
現在は地方の過疎地や一部首都圏郊外などでもサービスは開始の様相を呈しておりますが、
外出自粛が色濃くなり、今後スーパーマーケットへの買い物すら厳しくなった場合には、ネット
スーパーの配達員がパンクしてしまい人手不足を要するする頃には…いよいよタクシーの出番で
はないでしょうか。
・青森商工会議所:珍田タクシー・三八五タクシー・相互交通『ふんばるアオモリの
タクシー×ふんばるアオモリの飲食店(お買い物代行)』
・福島県いわき市:報徳タクシー『おつかいタクシー』
・和歌山県和歌山市:相互タクシー『SOGOお助け隊(救援事業・買い物代行)』
▼キャッチフレーズは『乗らないタクシー』新潟県長岡市(つばめタクシー)
緊急事態宣言が日本全国に出され、各地で外出の自粛が続く。しかし、日用品の買い物や常備薬の受け取りなど、どうしても出かけなければならない用事がある人がほとんどだ。 そんな中、新潟県長岡市のタクシー会社「つばめタクシー」がTwitterに投稿した買い物代行などを行う「乗らないタクシー」が話題になっている。
スーパーなどでの買い物代行や薬の受け取り代行、書類の受け渡しの代行などを想定。運転手が代理で料金を支払って商品を受け取り、自宅など指定の場所まで届けるといった方法で、4月20日から始める。料金は利用時間によって決まり、感染拡大の影響下では特別価格で行うという。
こんな時だからこそタクシー会社がすべきこととして来週4/20から「乗らないタクシー」を始めます!
買い物や薬の受け取りなどをお客様に代わってさせていただきます。
本当はもっと始めたかったのですが、手続き等に時間がかかってしまいました。
料金もこのような状況なので、特別料金とします! pic.twitter.com/xapspng2nt— つばめタクシーin長岡市 (@nagaokatubame) April 17, 2020
4月17日、Twitterに告知を投稿すると、4月18日昼過ぎまでに3.3万回リツイートされて拡散。「全国的に広がってほしい」「凄く良いアイデア」など、多くの応援コメントが寄せられた。つばめタクシーはハフポスト日本版の取材に「感染拡大の影響でお客さんが減っている。一方で、必要な外出でもためらう方もいるので、こうした需要が増えているのではないかと考えた」と話す。予想以上に多くの反響が寄せられ驚いているという。
まだどういった依頼ならば引き受けられるか精査している部分もあり、今始めるべきか葛藤もあったという。ただ、Twitterで「やれることから始めようということになりました」と明かし、「『こんな方法がいいと思う』があれば教えていただきたいです」と協力を求めた。「乗らないタクシー」は、通常の業務とは異なる「救援事業」として、運輸局に届け出。こうした事業を行なっているタクシー会社は他にもあるが、緊急事態宣言が全国に広まったタイミングで、より注目を集めた形だ。
つばめタクシーは「多くの人が外出を控えている今、困っている方も多いと思う。少しでもお役に立てればうれしい」としている。
【出典:ハフポスト日本語版 2020年4月18日】
食事のデリバリーサービス
以前は食事の配送というと大手のピザチェーン店をはじめ、飲食店系列独自の出前サービス
に限られておりましたが配送サービスの代行・多様化が進み「出前館」「Uber Eats」などの
宅配サービス業を利用するお客様も増加しました。同時に、そういったお仕事を隙間に
入れる副業的なお仕事のスタイルをする方も多く都心では見られます。
新型コロナウイルスの影響で需要が爆発的に増え、人員が追い付かない事態が各地で増えて
おりました。そんな折、地方都市などで地元のデリバリー会社とタックを組み、サービスを
開始するタクシー会社も。あたたかい食事が届くと評判のようです。
茨城県:さわやか交通(さわやかタクシーグループ)『お買い物・お料理宅配代行サービス』
宮城県仙台市:仙台中央タクシー×ハミングバードデリバリー『タクデリ』開始!
https://twitter.com/karimero77/status/1250331152570671114
宅配輸送
タクシーを利用した貨客混載は、以前より一部の地方過疎地で実証実験が成されておりました。
宅配業者大手の佐川急便は、京都府内のタクシー会社と協力し、
2018年度より貨客混載での宅配サービスを実施。
双方の配送業界・タクシー業界双方の人手不足緩和を図っています。
当初は限られた地域のみのサービスでしたが、昨今の情勢を考えますと全国的にバランスよく
タクシードライバーのシフトに組んでも効率がよさそうな気もしますよね。
※国土交通省は過疎地のみでの認可をしており、その他地域で貨客混載を行う際は各地の運輸局での許可が必要です。
京都府:山城ヤサカ交通『タクシーによる貨客混載事業』プレスリリース
佐川急便は山城ヤサカ交通(京都府京田辺市)との協業で、乗用タクシーを使った宅配便荷物の貨客混載事業を開始した。京都府笠置町エリアで、タクシーの乗客利用が比較的少ない日中の時間帯を活用して運転手が配達や集荷を実施する。荷物の集荷に乗用タクシーを使うのは全国初。過疎地域における交通インフラを旅客・貨物の用途で共用することで生産性を高め、人流・物流のサービス維持につなげる試み。
笠置町をカバーする佐川急便の京都精華営業所で山城ヤサカ交通のタクシー荷室に宅配便荷物を積み込む。荷物を積んだタクシーで旅客業務に就き、乗車待ちや空車時間など運行の合間に、配達や集荷業務も行う。集配終了後は、京都精華営業所に戻り、未配達および集荷した荷物を引き渡して業務を終える。
【出典:日刊工業新聞 2018年11月7日】
これからのタクシーの在り方
タクシードライバーとして、お客様をお乗せするのは当然のことですが、今求められること
そして今後求められる可能性がある事として、どうあるべきなのでしょうか。
外出自粛が続く=お客様が乗ってくれないに結びつくと当初思われていました。
しかし、そのお客様が求める需要は変わらずに循環している…
「生活用品」「ライフスタイルを極力維持したい」
という点に結びつきます。
ここに大きなヒントがあるのではないでしょうか?
人を乗せない大きな可能性
日本政府は「不要不急の外出は避けるように」と通達をし、国民の外出自粛を促しております。
当然これは一人ひとりの身を守るために、とても大切なことです。
ですが、生活をしていかなくてはいけない人々、経済を回していかなくてはいけない人々、
緊急事態を支えていかなくてはいけない人々もたくさんいらっしゃることも事実です。
タクシードライバーも同じことが言えます。
お客様が減り、休車や休業を余儀なくされる昨今、安心快適なタクシーに乗って頂く…
という事にこだわっていては厳しい状況であることが浮き彫りになってきたようです。
タクシーだから出来ること、「地域住民の役に立てること」「利用者の役に立てること」
それには井の中の蛙大海を知らずにならず、この国難を乗り切るには様々な異業種と
手を組み、いま出来ることをしていくべきではないかと思います。
人を乗せないタクシー…それはタクシーにとって空車か回送時でしかありえなかった
ことですが、外出の厳しいお客様に代わってお買い物の代行や、あたたかいお料理の配達、
お薬の購入など、こういう時にタクシードライバーがいて助かったと言える時代に
まさに今がチャンスでもあるかのしれません。
まとめ~『人をお乗せする』プラス『人を繋ぐ』へ~
新型外出自粛により、お客様からの直接の乗車は減少しております。
ですが、その中で「タクシーの新たな需要」が生まれつつあります。
タクシードライバーの新しい仕事のスタイルとして、「お客様をお乗せする」
だけでなく、「お客様を乗せない」スタイルも一つのタクシー営業として今後、
注目すべき部分ではないでしょうか?タクシードライバーとしてとらわれない
仕事の方法が今注目されています。
タクシー=旅客業ですが、今のご時世は物流でも可能性があると言えましょう。
「人をお乗せする」だけではなく、本当の意味で「人を繋ぐお仕事」。
それがタクシードライバーなのかもしれません。
本当の意味で「役に立てるタクシードライバー」は、きっとどんな時代でも
生き残ることが出来るでしょう。
地域の役に立つお仕事…タクシードライバーに
是非、興味をもってみてはいかがでしょうか?