観光地は依然として交通手段の需要と供給が追い付かず、オーバーツーリズムが発生している地域が国内では後を絶ちません。つい数年前でしたら、「嬉しい悲鳴」で片づけていた問題も、昨今は国内にとどまらず訪日観光客の対応を実施すべく様々な対応に追われています。
これらは地域の企業にとどまらず行政、そして政府機関も結託して実施しているのですから深刻さと重要度が伺えます。
今回はタクシーメディア内でも恐らく初めとなる『北陸地方』は福井県からのニュースです。
見出し
運送会社ドライバーがライドシェアでタクシー運転手!福井県永平寺町で3社連携の観光サービス開始。
永平寺(曹洞宗大本山)の門前町として知られ、歴史的町並みや田園風景が美しい福井県吉田郡永平寺町にて2025年1月11日より、地元のタクシー事業者と運送会社の2社と旅行代理店大手の3社連携による「日本版ライドシェア(NRS)」のサービスがスタートしております。
【関連記事】あなたは知ってる?日本国内の「ライドシェア」には2種類ある!
インバウンド需要と国内の観光客向けの観光タクシープランによるサービスとなっておりますが、どのような内容なのでしょうか?
観光タクシープランを販売
この観光タクシープランは、地元タクシー事業者の「松岡交通株式会社(以下:松岡交通)」と運送会社の「日本商運株式会社(以下:日本商運)」、そして国内最大手旅行代理店の「株式会社JTB(以下:JTB)」の連携によって誕生したサービス「永平寺町・禅の里観光タクシープラン」で、2日前の1月9日より販売を開始しております。
【関連記事】大阪タクシー&ライドシェアが『大阪・関西万博期間中』大幅規制緩和!
ツアーはJTBが販売を実施し、タクシー事業者の松岡交通が車両を提供。
そして運送会社の日本商運社員がライドシェアドライバーとして運行するという形です。
注目すべきサービスの運用には「日本版ライドシェア(NRS)」を活用するとのことで、注目が集まっております。
地域の交通問題が抱える課題解決を目指す
何より今回の観光サービスで『日本版ライドシェア(NRS)』を取り入れる背景には、地域の交通問題が抱える課題解決を目指す狙いがあります。
【関連記事】国土交通省がバス・鉄道事業者を対象に参入要件緩和へ
地元タクシードライバーの不足、インバウンド向けのコンテンツ不足、そして地域の二次交通脆弱性などの地域課題があり、観光タクシーサービスの一環に運転手をライドシェアで賄うことにより解決を図っていくようです。
今回のライドシェアを通じてのサービスに解決の糸口を見つたいという考えなのでしょう。
運送会社のドライバーを登録
「永平寺町・禅の里観光タクシープラン」では、タクシー運転手ではなく、運送会社(日本商運)の社員をタクシー事業者(松岡交通)のライドシェアドライバーとして登録することによって、旅客可能なドライバーを確保しております。
【関連記事】新たな規制緩和「災害時にライドシェア運行可能」に。
注目のコースと期間
「永平寺町・禅の里観光タクシープラン」のコースはどのようなコースになっているのでしょうか?
発表された概要によると2種類のコースが用意されております。
1:禅体験ツアー
福井駅を出発し、永平寺での坐禅体験や門前での精進料理の昼食、越前和紙を使った墨アート体験などを実施
10:30に福井駅を出発し、17:40頃には福井駅もしくは宿泊先(福井市内又は永平寺町内)へ送迎
2:酒体験ツアー
福井駅を出発し、永平寺の参拝と黒龍、白龍、越前岬の酒蔵や販売店で製造工程の見学やテイスティング、角打ち体験を実施
10:30に福井駅を出発し、16:40頃には福井駅もしくは宿泊先(福井市内又は永平寺町内)へ送迎
また、注目の期間は1月11日から2月28日までの毎週土曜日に実施され、3月以降は事業者やコース、設定日を拡大して販売される予定とのことです。
福井県内でも広がりを見せる“日本版ライドシェア”
福井県内では、昨年解禁され全国的にサービスの拡大を見せる「日本版ライドシェア(NRS)」を実施している地域があります。
【関連記事】ライドシェア利用。都市部と地方で差。
永平寺町よりも先に既にスタートしている県内のライドシェアはどのような形で展開しているのでしょうか。
【求人情報】★「働きやすい職場認証制度」登録企業★安心の業界最大手★敦賀第一交通株式会社はコチラ(敦賀市)
2024年8月30日よりスタート
まず昨年の夏、2024年8月30日に福井県の福井市と敦賀市でタクシー配車アプリ「GO」を用いての「日本版ライドシェア(NRS)」がスタートしました。
地元福井市の※1福井交通(水曜~金曜の18時~21時)と、敦賀市の※2敦賀海陸運輸(平日17時~21時)が運行を開始したのを契機に、翌日31日には坂井市と越前市、9月2日にはあわら市、11月に越前町、鯖江市、大野市、そして12月に永平寺町で運行を開始しております。
※1、※2…いずれも現在は実証運行を終了しています。
▼福井県内の日本版ライドシェア(NRS)実施地域
福井市、あわら市、坂井市、 鯖江市、越前市、 大野市、永平寺町、 池田町、越前町、敦賀市、美浜町、若狭町
JR東日本も本腰入れる、ライドシェアの行方は?
昨年12月にお届けしたビッグニュース『ライドシェアにJR東日本が本格参入!』ですが、今後自治体絡みでの運行となれば当然ながら大手旅行代理店との連携も難しい話ではなくなってくるでしょう。
となれば、このような鉄道会社がライドシェア事業に参加するビジネスモデルが功を奏し定着した暁には今後、JRは東日本のみならず、北陸地方の管轄である「JR西日本」もライドシェアサービスを視野に入れて動くのではないでしょうか。
そうなる日はそう遠くない未来にも十分想像に難くないですし、あり得る話となってくるでしょう。
地元タクシー事業者としても、地方交通ならではの課題に直面しているからそ、孤立を図ることなく今回の永平寺町で実施する観光プランのような協力体制が整ったプランを積極的に見出して行ってほしいと願う限りです。
これから~Opinion~
福井県は2024年3月16日、北陸新幹線の金沢~敦賀間の開業に伴って、永平寺町への来訪者増加が見込まれています。
その中で、効率的な観光周遊を可能にする新サービスを目指すため、今回のプランにライドシェアを取り組んだとのことです。
ライドシェアを活用したタクシーツアーを永平寺町で運行することで、町内の経済活動がより活性化されることが期待されていますし、インバウンド需要による観光客増加によって新たな魅力を全国のみならず、世界へと発信することができるのでしょう。
そうなれば、次の課題はオーバーツーリズムに焦点を当てなければならなくなります。
各地の観光地がオーバーツーリズムによってタクシー配車アプリの積極導入やライドシェアの規制緩和を実施しているのように、早期の段階で『次のフェーズ』を形成し、対策を練っていくことが今後のスムーズな観光を導く大事な鍵となるのではないでしょうか。