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接客業のタクシー運転手も覚えておこう!『カスタマーハラスメント(カスハラ)条例』が東京都で成立。
サービス業に従事している人間であれば、誰しもが経験のある「クレーム対応」。
万全を期したものでも万一、ユーザーが許容範囲の『こうあるべき』のラインを超えた時に発生する苦情から、本当にされて致し方ない苦情まで数多内容はありますが、近年度が過ぎた対応に対する条例が制定されました。
今、良くも悪くも注目を浴びる『カスタマーハラスメント』を深堀りしたいと思います。
タクシー運転手は接客業!必見です。
東京都が全国初の条例可決・成立。2025年4月より施行予定
東京都議会は2024年10月4日、『東京都カスタマー・ハラスメント防止条例』を、可決・成立させ2025年4月1日から施行予定にすると決めました。
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これは顧客による著しい迷惑行為の防止を目的とした全国初の条例です。
『東京都カスタマー・ハラスメント防止条例』はカスハラの一律禁止のため、主に以下の内容を定めています。
①カスハラ防止に関する基本理念
②東京都・顧客等・就業者・事業者の各主体の責務
③そしてカスハラ防止指針の作成・公表
ようやく重い腰を上げてくれた…サービス業関係者としてはサービスの対価を提供するにあたりある種対等な立場でもあります。
しかし今回「カスハラは違法である」という趣旨が本条例に明記されたことによって、被害の減少と緩和が期待されるのは必至です。
『カスタマーハラスメント(カスハラ)』とは?
「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、 顧客(カスタマー)が企業に対して理不尽なクレーム・脅迫・暴言・言動をすることをいいます。
例えば「事実無根の要求」や「法的な根拠のない要求」、さらには暴力的かつ侮辱的な方法や言葉による要求などがカスハラに該当します。
カスハラ増加の背景
「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に該当する行為が増えた要因は、昨今のSNSの普及によるユーザー側の発言力の増大です。
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気軽にSNSを通じ、ユーザーが企業や飲食店を容易に評価することが可能になったため、ユーザー側の発言力が増加→結果として企業側がそれに屈してしまうという悪しき構図が発生しやすくなったのです。
その結果、過度な言論や「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に該当する行為が増加したのです。
しかし現在、様々な種類のハラスメントが問題視される風潮の中、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が新たな形として注目されるようになりました。
事業者は従業員を守る責任がある。
ここで重要なのが、事業者は事業者・組織が従業員の健康と安全に配慮する『安全配慮義務』に基づいて、従業員を「カスタマーハラスメント(カスハラ)」から守る責任があるということです。
“何を言われても利益が出ていればOK~。勝てば官軍負ければ賊軍”という時代はもうとうに過ぎたということなのです。
見極めが難しいケースも
「カスタマーハラスメント(カスハラ)」は理不尽で著しい迷惑行為を指し、BtoCのみならず、対企業間の取引等でも該当します。
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しかしながら、中には正当な苦情(クレーム)もあるのも事実で、それらとカスハラの見極めが難しい場合もあるのです。
このような場合に直面してもしっかりと対処できるように予めタクシー事業者各社では『対応マニュアルの策定』を徹底的に行い対応策を整える必要性があります。
起きない・起こさないために
正味、タクシー事業者の中で多く起こる苦情には「カスタマーハラスメント(カスハラ)」案件も存在します。
確かにテレビメディアで夕方放映されるような事象は滅多なことが無い限りありませんし、あのレベルは間違いなく検挙に至っています…。
ごく本当に稀に、どうしようもないケースは事例としてあるのですが、大半は事前の対応によって「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を回避できる可能性があります。
それはどのような状況でしょうか?
“ボタンの掛け違い”をなくす。
お客様が望む対応に対して、期待に沿えないことはサービス業である以上、宿命でもあります。
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そしてお客様が「当たり前」「こうあるべき」というのは必ずしも全人類共通の物差しではありません。
それはタクシー運転手一人一人の常識とて同じです。
▼例えばこのような事例があります。
先日、知人が九州方面へ帰省をしました。その際手配したチケットは旅行代理店経由で購入したもので、指定席でしたが新幹線の座席の特性上、3列の真ん中(B席)であることが分かるや否や、「自由席なら空いていれば窓側に座れる。指定席券は自由席でも座れる」とひらめき、とっさにチケットに表示してある座席とは違う自由席へ直行。見事に座ることができたそうです。がしかし、その後検札ではっきりと乗務員さんに『この乗車券は企画乗車券ですので該当のでは乗れません。」と言われました。
確かに知っていればよかったのですが、知人は「知りませんでした。ではどうすればよいですか?」と尋ねると車掌さんはすかさず「別途料金をお支払いください。」と言うのです。さすがにあんまりだと思い、「そんなの無理です。確かに無知でしたけど、同じ新幹線に乗っているのです。本当にそれ以外に方法はないんですか?」と聞き返すと、もう一人の乗務員さんが登場し再度事情を説明したところ「列車が名古屋に到着しましたら速やかに降車していただき、●●時●●分の列車に乗っていただけますでしょうか?そちらがこの乗車券の電車ですので。乗り換え時間が少ないのでお気をつけください」と言われ、事なきを得たようです。
しかし最初に無機質にお金を要求されたことには知人も少々ご立腹だった様子でした。
この感情がもつれた要因として、 最初に乗務員さんから注意された知人が「知りませんでした。ではどうすればよいですか?」と尋ねると、意を介さず「別途料金をお支払いください。」という回答が来たことでしょう。
他にも方法があったにも関わらず、無機質に料金を支払えと言われたことで発生したボタンの掛け違いだったのではないでしょうか。
言葉は『潤滑油』
上述の事例ですが、本件は実際に大事にはなっておりませんが、接客業はしっかりと結論を伝えることも大切ですが、それに伴い多少の遠回しな伝え方や、寄り添った形の伝え方も大切なのです。
「お気持ちはわかりますが…」「そうですよね」「ありがとうございます」「申し訳ありません」
時に言葉は『潤滑油』になります。
いくらこちらが悪くないとはいえ、出だしから毅然とした態度を取るべきかどうかは、しっかり判断をしましょう。
リズムを大切に
リズムを大切に…って音楽のバンド練習かよ!!
って思われるかもしれませんが、侮ってはいけません。
世の中はリズムで動いていると言っても過言ではありません。
よく「あいつと一緒にいると調子●うんだよね…」「彼と喋ってるとテンション下がる」という場面に遭遇したことはありませんか?或いは薬局の窓口でなんとも独特な間で、お客様をイラつかせるプロのような人など…。
それくらいリズムというのはコミュニケーションにおいて大切な役割を果たしています。
そしてそのリズムを合わせるには、お客様の目をしっかり見て、頷き、頭を下げる時は下げる…これらの所作が伴って良い形となりますよ。
接客業とは正味気を遣う仕事ですが、頑張ったら頑張った分給料に反映される仕事です。しっかりと実施しましょう。
筆者の経験『お客様は神様…ではない』
筆者の経験で恐縮ですが…タクシー運転手の仕事をする遥か昔、初めて接客業のアルバイトをしたのが大手チェーンの「焼肉屋さん」でした。
その初日、会社が発行する仕事マニュアルを読んでいると衝撃的な言葉が目に入ってきました。
それは『お客様は神様ではない』です。
当時、接客という仕事はきっと「お客様は神様」と思って取り組まないといけないと思っていた自分にとって、まさに天と地がひっくり返るような言葉でした。
実は『お客様は神様』なんて考え方は…この世界には存在しないのです。
事の発端は、ご存じの方はいるかわかりませんが演歌歌手の三波春夫さんがステージでお客に向かって言った『お客様は神様です』という造語です。
しかしその真意は…コンサート会場に来てくださったお客様(聴衆・オーディエンス)に対して発したものなのです。
接客業でのお客様は決して神様ではありません。
(三波春夫さんのホームページにも捉え方の誤りを掲載しています。)
そのマニュアルにはさらに『お客様とお店との関係は対等である』と記されていました。
しかし、だからと決してこちら側が横柄に構えたり不愛想にする訳ではありません。
『いらっしゃいませ』や『ありがとうございます』といった感謝の気持ちは表現すべきだと思いますし、商売をする以上それは当然でありましょう。
近年、居酒屋でも様々な接客方法の模索が続いていますが、評価を過度に恐れるが故に様々な問題が起きています。
経済の低迷で企業間の競争が激化。客離れやSNSへの悪評の書き込みを過度に恐れ「客を神様のように扱い、店側とのパワーバランスが崩れた」と話す。窓口に権限のない非正規労働者が配置され、クレームに謝罪するしかない状況が事態を悪化させているという。
【読売新聞2023/9/13『お客様は神様…じゃない!「カスハラ」横行、過剰なおもてなし合戦も一因】
カスハラが起きたら
もし、今あなたが務めている場所で「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が起きたら…どのように対処したらよいでしょうか?
必ず起きた事案をタクシー会社へ説明する
「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に対しては、一人で対応せずに警察やタクシー会社へ連絡し、説明を行ってください。
現場対応の方法を判断できる責任者を呼び、引き継ぎや情報共有を実施しましょう。
事業者としての対応を決定し、カスタマーに通知する。
タクシー事業者は、事業者としての対応を決定しなければなりません。
対応マニュアルを見直すことも重要
タクシー運転手もとい、タクシー事業者が経験したカスハラの事例は、今後の対応に大いに参考となります。
カスハラ事案が発生した際、タクシー会社としての対応は適切であったか、タクシー運転手のケアはできているか…といった事案も検証した上で、改善すべきポイントがあれば対応マニュアルをアップロードしていき、カスハラの対応がより強靭なものとなるよう固めておくことが重要です。
そのような状態を放置しておくと、休職、離職へとつながり…当人にとってもタクシー事業者にとってもメリットが何一つありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
はたして東京都が可決・成立したカスタマー・ハラスメント防止条例ですが、『罰則規定がない』部分がどこまでタクシー運転手を守る事が出来るのでしょうか。
タクシー事業者も今後、日々の多忙さがある中でも適切なケアを行うことが重要でしょう。
確かにタクシー運転手という職業は接客業ですし、精神力の強さがモノを言う仕事ではあります。
しかし…人間、モノには限度があります。
カスハラの内容に応じたケアは是非とも実施することを推奨したいですよね。