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ライドシェア利用。都市部と地方で差。
タクシー業界では、ライドシェア導入にあたり十年以上前から反対論が根強く、時間をかけてようやく日本版という独自の業務形態に落ち着き舵を切れたのです。
しかし蓋を開けてみると『限られた時間のみ』『アプリ配車限定』『決済はキャッシュレス系のみ』とかなり制限がついてのスタートとなり、徐々に規制緩和には動いているものの、〜隙間時間にタクシー・ハイヤー的な要素で仕事〜という訳には行きません。
都心では需要増加傾向
令和6年4月に開始された日本版ライドシェアはひとまず東京都内を中心に首都圏からスタートしました。
当初大手配車アプリを手掛ける『GO』の発表では、応募が1万人に迫るとのことでした。
しかし蓋を開けてみると稼働までこれたのは1割程度。
ライドシェアニュース/交通空白解消本部を国土交通省が立ち上げ
それもそのはずで、自家用車持ち込みの場合は厳しい審査があること、さらに自家用車持ち込みでない場合でもライドシェアドライバーとして営業は可能です…がタクシー会社が指揮をとって実施するという事ですので、実際に乗車する車両はJPN TAXIやセダンと言った通常のタクシーと同じ車種なのです。
「タクシーの方が安全だ」という声は根強く。
もちろんこれらに行燈は付いていませんし、ナンバープレートも白ナンバーです。
大きな違いといえば、助手席の席から見て左上(外側ですと右側)に『ライドシェア』という専用のスーパーサインがあることくらいでしょう。
令和6年9月現在、日本版ライドシェア(NRS)は多くの規制が敷かれている中でスタートを切っておりますが、荒天時や気温上昇時の規制撤廃など、徐々に緩和を見せていますが中々全国的に広まりを見せる様相はありません。
せいぜい今の段階では情報収集程度の印象を持ちます。
ライドシェアニュース『気温35度以上で台数上限引き上げへ(規制緩和)』
今後政権が変わりおそらく何かしらの規制が大きく緩和されることが予想されますが…それでも乗車する側からすると、「タクシーの方が安全だ」という声は根強いのです。
東京はそこそこ乗車もあるそうですが…タクシーのお助け部隊感が否めません。ありがたいと言えばありがたいですが…。
観光都市では意外と苦戦
日本版ライドシェアはタクシーが捕まらない時間帯をピンポイントで抑えたサービスです。
ライドシェアニュース/雨の日は拡充へ規制緩和拡大。タクシーの助け舟になるか。
そのため需要の拡大する都心部では比較的浸透は良いものの、隙間産業的な仕事としての要素が拭いきれません。
観光都市といえば東京のお隣、神奈川県横浜市はもちろんのこと、京都、大阪、広島、福岡など昨今インバウンド需要に湧く観光都市では意外にもライドシェアの利用率は1日数台程度と非常に低く、伸び悩んでいるのが現状です。
地方では浸透せず課題も…
本来ライドシェアが浸透して欲しいのは地方での営業です。
タクシードライバーの豆知識③『タクシーの種類って何がある?小型からライドシェアまで紹介!』
しかしながら地方でのライドシェアは伸び悩みが続いているのが現状です。
特性上日本においてライドシェアは先ず『過疎地で活躍』してほしいものです。
青森県ではライドシェア導入も認知足りず
青森市のタクシー事業者『成長(なりちょう)タクシー』ではが青森県内で初めてライドシェアを導入してから1ヶ月が経過し、該当の営業区域である青森交通圏(浪岡地区を除く青森市と蓬田村、平内町)における利用者数を発表しました。
それによるとライドシェアの利用は1日1回〜4回程度であったとのことです。
この数字が表すように、まだまだ地域住民の中では認知度が足りていない状況が顕著に現れていると言っても過言ではないでしょう。
採算性があるのか課題あり
現在、青森市での日本版ライドシェアにおける1日数回の運行回数では運賃収入おおよそ2千~7千円程度とのこと。
一般ドライバーの最低限の収入を確保するためにはタクシー事業者が赤字分を穴埋めする必要があるため、ライドシェアそのものが果たして採算性があるのか課題が残ります…。
成長タクシーでは現在、ライドシェアにおける一般ドライバーの募集は検討中としており、内勤社員がライドシェアの運転手を務めておます。
そもそも『配車アプリ』を普及することが先
そもそも日本版ライドシェア時給制なので車庫待機でも給料発生という悪しき利点があります。
地方では生産性なく車に乗って待機しているだけで仕事が終わってしまうという事態にもなりかねません。
タクシー運転手の雇用拡大を正社員のみならずアルバイトへも拡大すべき理由はまさにここにあります。
せっかく現代では『アプリ配車』という恩恵があるのですから、タクシー運用の活性を図るためにはそもそも配車アプリを普及する事が先決でしょう。
ちなみに青森県ではライドシェアの運行回数が1日に1〜3回程度とのことです…。
さらにライドシェアそのものの認知不足にも課題があるようです。
全国レベルで知られる青森ねぶた祭の期間中もタクシー供給が通常ならば不足しているはずなのにライドシェア利用が同じ水準出会った事が明らかになっています。
観光客利用が少ない理由
日本版ライドシェアが開始されて早半年以上が経ちました。
6月に民間調査会社のMM総研が全国の15歳から79歳までの男女1000人を対象に「日本版ライドシェア」を利用したいかインターネットでアンケートを実施したところ、「利用したい」との回答は全体の18.3%でした。
つまり結果として「利用したくない」が81.7%と大幅に上回る結果となりました。
時間帯にマッチしていない
ライドシェアの営業時間帯が限られており、得に東京都内においては早朝や夕方と言ったタクシー需要が高く供給の追いつかない時間帯に限られています。
タクシー事業者としては供給維持のため是が非でもライドシェアを以って猫の手も借りたい気持ちではありますが、そもそも早朝と夕方で隙間時間働く需要があまりないのも事実…。
時間帯にマッチしていないのです。
認知が少ない
上述の青森県におけるライドシェアでも触れましたが、まだまだ認知が少ないのも事実です。
『名前は知ってるけどサービスは知らない』と言う方も多く、タクシーと似て非なるものという事もまだ周囲に浸透していないようです。
まだまだこの先も認知されていく事が課題と言えましょう。
ライドシェアがタクシーを脅かす理由は
タクシー業界では何年も前からライドシェアを問題提起していました。
タクシードライバー転職の不安…ライドシェアって何?日本もついに解禁に意欲?
純粋に考えれば、供給不足の救世主…という風に思われるかもしれませんが、実はタクシーを脅かす理由があります。それは現場で働くタクシー運転手にこそ多大な影響を及ぼすからです。
運賃の値下げ
ライドシェアは世界各国ではすでにメジャーなサービスとして受け入れられています。
タクシー次世代型アプリ『DiDi』が日本型ライドシェアを始動!
しかしながら一般タクシーとの大きな違いとして代表的な例を挙げるならば『一般ドライバーでもできる』、そして『運賃設定が自由に変更できる』ことです。
前者は安全面の担保で問題提起は度々起こっていますが、後者は特に日本国内では現在を以てしても反対が根強いのです。
理由は明確で、現在タクシー運賃は全国各地域で原則運輸局からの指示により一律で実施していますが、ライドシェアが安価な料金を提示することによってより顧客獲得の競争が激化し、タクシー事業者の廃業が目に見えるからです。
安全面の不安も
それだけではありません。輸送の安全面でも大きな問題を抱えています。
タクシーニュース/新規参入ライドシェア事業者『newmo』が大阪万博へ向けドライバー募集を呼びかけ
競争が激しくなればなるほど、顧客の取り合いになり、交通量が著しく多い都心部は交通事故に巻き込まれやすくなるでしょう。
これらは大変に懸念される事案です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ライドシェアには様々な弊害があり、スムーズに運べない状況が続いています。
もちろんご自身のライフスタイルに合わせられる隙間産業的な部分でハマれば何も言うことはないですが、プロドライバーという観点で見ると…自分が頑張った分だけしっかりと成果に反映されるタクシー運転手という純粋な『運転手さん』のお仕事も同時進行で検討してみることをお勧めします。
やりがいはひとしおですよ!