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自家用車がタクシーに?日本版ライドシェア4月より開始
日本のタクシー業界にとって運命の時がやってきたと言えましょう。
国土交通省は2024年3月13日、「日本型ライドシェア(自家用車のタクシー)」を4月上旬より開始することを決定しました。
決定の背景には、タクシー需要の昨年10月から12月ににかけての状況を各配車アプリのデータを基に分析し、地域や曜日・時間帯などのタクシー車両供給不足台数を明らかにした上で今後のライドシェアにおける運行を見込んで制定した事が挙げられます。
まもなく制度通達を正式に制定し、地域・曜日時間帯を対象にタクシー事業者からライドシェア事業の許可申請を受け付ける見込みです。
注目の地域
では、今回のライドシェアですが、地域は果たして国内のどの場所で認可が下りるのでしょうか?
4月上旬から「何処でも出来る」ということではないのです。
当然ながら日本版ライドシェアには厳格なルールがあります。
ここでは、ライドシェアが導入され各地域の最小マッチング率(該当時間帯内で最も配車が成立しなかった1時間単位の数値)とタクシーの不足台数及び登録台数を2023年10月~12月のタクシー配車アプリ各社(GO、S.RIDE、Uber、DiDi)のデータを基に算出したものになります。
東京特別区・武三交通圏
先ずタクシー営業地域の花形でもある『東京特別区・武三交通圏』でも今回のライドシェアは解禁されます。
▼東京特別区・武三交通圏の最小マッチング率・時間帯・台数(2023年10月~12月)
曜日・時間帯 | 最小マッチング率 | 不足台数 | 登録台数 |
月~金/AM7:00~10:00台 | 78% | 1,780台 |
26,983台
|
金・土/PM16:00~19:00台 | 85% | 1,100台 | |
土/AM0:00~4:00台 | 66% | 2,540台 | |
日/AM10:00~PM13:00台 | 88% | 270台 |
早朝の時間帯や金曜日、週末の夕方前の不足台数が顕著
神奈川京浜交通圏(横浜市・川崎市・横須賀市)
神奈川京浜交通圏はやはり東京特別区・武三交通圏に足並みをそろえた格好になりましたが、それでも曜日特性や時間帯特性が顕著に出ているのが特徴でしょう。
正直なところ過疎地でない限り成立するのか疑問でもあります…。
▼神奈川京浜交通圏の最小マッチング率・時間帯・台数(2023年10月~12月)
曜日・時間帯 | 最小マッチング率 | 不足台数 | 登録台数 |
金~日/AM0:00~5:00台 | 68% | 940台 |
6,734台
|
金~日/PM16:00~19:00台 | 82% | 480台 |
名古屋交通圏
名古屋市交通圏は決して最小マッチング率も不足台数も悪い数値ではありません。
初物好きという県民性…ではないとは思いますが、これもまた県内の遠方にある交通圏エリアから試験導入してみても良かったのではと筆者は思うばかりです…。
▼名古屋交通圏の最小マッチング率・時間帯・台数(2023年10月~12月)
曜日・時間帯 | 最小マッチング率 | 不足台数 | 登録台数 |
金/PM16:00~19:00台 | 87% | 90台 |
5,210台
|
土/AM0:00~3:00台 | 67% | 190台 |
京都市域交通圏
京都市域交通圏は不足台数は顕著に表れているのが週末(金~日)でしょう。
場所柄世界有数の観光地であることから、近年タクシー単価も非常に高くなってきていますが、それだけタクシー需要が伸びる=供給が追い付かない事態が発生しています。このような事例は全国でも京都が一番初めにニュースとして飛び込んできた印象があります。
ライドシェアを組み込むという点では、やや合理的にも思えますが、問題点や課題に対してどう向き合うかタクシー会社との兼ね合いが注目となります。
▼京都市域交通圏の最小マッチング率・時間帯・台数(2023年10月~12月)
曜日・時間帯 | 最小マッチング率 | 不足台数 | 登録台数 |
月水木/PM16:00~19:00 | 81% | 200台 |
5,574台
|
火~金/AM0:00~4:00 | 80% | 200台 | |
金~日/16:00~翌AM5:00 | 63% | 490台 |
今後は他の大都市圏も視野
東京、神奈川京浜、名古屋、京都と先行して日本版ライドシェアがスタートするのですが、今後の展開はどうなるのでしょうか?
今回は国土交通省の決定では4か所でスタートしますが、今後は「札幌市」「大阪市」「福岡市」などで順次日本版ライドシェアを展開するとのことです。
配車アプリの普及率が高い地域を中心に最小マッチング率・時間帯・不足台数・登録台数を公表し、展開が可能か判断される見込みです。
日本交通に応募1万人
全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗会長は、先般東京・永田町の衆院第一議員会館で開かれた「超党派・ライドシェア勉強会」において、日本版ライドシェアの最新準備状況を発表しました。
その中で自らが取締役を務める東京大手四社の『日本交通』に日本版ライドシェアドライバーの応募が1ヶ月で累計1万人に達している事を明らかにしました。なんと1日300人ペースとのことです。
応募者の事例
応募者の中には自家用車で高級車を所持している方が目立つようで、「ポルシェ」「アルファード」「レクサスLS」「BMW」など…川鍋会長も『皆さんかなり良い車をお持ちで…』と話していました。
また、職業欄も多彩なのが印象的で、専業主婦、非常勤講師、自営業など今までタクシーや運送業に縁がなかった方も数多くエントリーしているとのことです。
安全の担保は?
一番気になるのは、「安全の担保」ではないでしょうか?
二種免許を取得していない、一般ドライバーがお客様を乗せるのです。
お客様からしてみれば、知り合いの車に乗せるのとは訳が違います。
あくまで『タクシー事業の一環』として展開される。
今回の日本版ライドシェアは、道路運送法78条3号(公共の福祉の許可)に基づきタクシー会社管理の下『タクシー事業の一環』として展開されます。
安全面を重視し、ライドシェア車両の配車や運行管理、整備、運送責任はタクシー会社が負うのです。
この部分は「日本版」の特徴かもしれませんが、タクシードライバー同様に“研修”はある程度必須でしょう。
自家用車はライドシェア用にアップデート
日本版ライドシェアは自家用車で営業可能ですが、ライドシェア用にアップデートしなければいけません。
自家用車はまずジャッキアップしタイヤを全て外し、ブレーキパッドの厚みやタイヤの溝を確認します。また、ライドシェア専用の表示灯を付け、SOS付の通信型ドライブレコーダーを設置することが義務付けられています。
もちろん車内は清潔でないといけません。エンジンオイルが汚れているのもNGです。
現役タクシードライバー「カケル」の個人的見解
ここで現役タクシードライバーを務める筆者、「カケル」の個人的見解をお話ししたいと思います。
実際に現場に出てタクシードライバーをして思いましたが、『流し営業』が極端に減っている印象を受けました。
タクシードライバーの多くが配車アプリに偏りすぎて、その他の配車や流し営業に目が行っていない…そのため需要と供給が崩れている、これはもちろん人手不足の点も要因とは思います。
しかし実際に乗務をしてみて『アプリ配車の時代』というのは間違いないものの、実際は流し営業の需要はまだ全然消えていない事がよくわかりました。
ライドシェアを認可してしまった原因の一つは、もしかしたらタクシードライバーの多くが『アプリ配車』の営業に偏りすぎて手上げのお客様(流し営業)や無線配車注文のお客様からのタクシーが捕まらないからかもしれません…。
確かに現在空車は一時期よりは増えましたが、コロナ禍が明けた頃は致命的な程、空車のタクシーがいない状態でした。
最近でも街を走行するタクシーの表示器(スーパーサイン)を見るとやたら「予約車」表示が多いですよね。確かにアプリはよく鳴りますが…。
これから~Opinion~
ライドシェアがいよいよスタートします。
ついに日本でも普通免許で自家用車の一般ドライバーが営業を開始できるようになると思うと、少々恐怖心も覚えます。
日本版…日本版…とはいうもの、何がやねんと言いたいものです。
タクシー業界の牙城を、100年の歴史に大きな黒船がやってきたのです。今後タクシー業界に与える影響はどのようなものなのでしょうか。
かれこれ10年以上タクシー業界を震撼させ、反対の声を上げてきたライドシェアですが、実際のところコロナ禍が過ぎてタクシードライバーへの入社や転職も大都市圏を中心に増加しているのも事実です。
しかしタクシーの接客はプロにしかできません。
運転もプロにしかできません。
「プロのタクシードライバーしかできないことを、堂々とやっていけばいい。」これが2024年4月以降のタクシードライバーが肝に銘じる事な気がしてなりません。