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タクシードライバーもヨダレが出ちゃう!?「ロング」が出た時の注意点。
タクシードライバーの仕事を生業としている方以外が、なかなか馴染みのない言葉なのがこの「ロング」というフレーズ。
ですが…なんとなく察しは付くかもしれません。タクシーを利用された方も一度や二度は、このロングの経験があるかもしれません。
しかし、なぜこのロングとやらがタクシードライバーにとって生唾モノの出来事と言えるのでしょうか?
ロングとは?
ロングとは、タクシー営業における「長距離送迎のお客様」の事を言います。
いわゆる隠語なのですが、英語の『long(長い)』から来ています(…ってそりゃそうですよね笑)。
よくタクシードライバー同士の会話で帰庫時などに『今日はロングの人がいてさぁ~、池尻から流しで乗せたら成田空港まで行ったよ!』などと盛り上がることも。
ちなみにワンメーターの短距離は「ショート」とはあまり言わず、「ちょい乗り」というのがよく聞くフレーズでしょう。もしくは冒頭の「ワンメーター」でも通じます。
初乗り(区域によって距離数、料金に変動あり)=ワンメーターという解釈です。
まさに❝大当たり❞
ロングのお客様は、そう滅多に出会えるものではありません。
仮にあなたがタクシーを利用する際、自宅から何処まで乗りますでしょうか?通院などは別として目的地まで行くケースは意外と稀かもしれません。
もし旅行へ出掛ける際、飛行機に乗って行くとしたら『空港へ行くためのバス・鉄道の乗換駅』までタクシーを利用するというケースが多いでしょう。
ドアツードアで本当の目的地まで行く方は意外と少ないですし、第一に料金も目を背けたくなるような高額になることは至極当然の結果です。
ですので、ロングのお客様に出会える確率は決して高くなく、そのようなご乗車の機会を頂いたら「大当たり」だと思います。
業界用語では『お化け』
タクシー営業でロング(長距離送迎)が出た際、今はあまり聞かれなくなりましたが業界用語で『お化け』と言っていました。
これには諸説ありますが、ロングのお客様の特徴として『思わぬ場所や時間帯でな長距離送迎のお客様を乗せた際、よくバブル全盛期などは「昨日錦糸町でお化けが出たんだよ~!」なんて会話が営業所でよくあったそうです。
タクシードライバーのロングに関する注意点!
タクシードライバーが、ロングのお客様と遭遇した際、嬉しい気持ちになってしますのもわかります。
しかし、気を付けなければいけないことがいくつかあります。
ここでは、長距離送迎だからこそしっかりと確実にお客様を目的地まで送り届けるべく注意点をまとめています。
LPガスの残量
タクシー車両は一部を除きガソリンでは走行することができません。LPガスという燃料を使用して走行するのです。ちなみにLPガスもガソリンも実は元々は同じ石油なのです。
タクシードライバーは、帰庫時或いは出庫時にLPガススタンドへ行き、燃料を満タンにして営業を行います。
自分自身の営業エリア内での乗務であれば、概ね隔日勤務でも1回の給油で事は足りるのですが、やはりロングとなるとそうはいかなくなります。
予め少なくなってきたと思ったら、早いうちに最寄りのLPガススタンド又は提携のLPガススタンドへ行き、準備万全にしておきましょう。まさに心も満タンに~です。
行先確認を怠らないこと
タクシードライバーにとって「行先確認」はとても大事な事案です。
おそらく研修時等に無線会社の垣根を越えて例外なく接遇の一環で行うのではないでしょうか。
とかく、このロングのお客様の場合は少し間違えたり、確認をしないと大変なことになります。
▼実際にあった事例として
お客様は横浜市青葉区の「田奈(たな)駅」を指名したにも関わらず、タクシードライバーは東京都田無市の「田無(たなし)駅」に行ってしまいました。これは仕方ないでは済まされないのです。
予めお客様には目的地をしっかりと確認をすることが重要で、ポツンと言われた場合は「~市の〇〇で御間違いないでしょうか?」と聞いてみましょう。
そこでもし回答に間違えたとしても、そのまま走行して間違えた場所へ到着してマイナスの営業収入とクレームをもらうよりは遥かに良いです。
空港の場合は必ずターミナルなどの確認
タクシー営業をしていると、「空港へ向かってくれ」というお客様をお乗せすることもあります。
その際は、必ずターミナルを確認しましょう。
羽田空港ならば「第一」「第二」「国際線」、成田空港なら「第一」「第二」「第三(LCC)」があります。
また、航空会社も把握しておくとよいでしょう。
いざターミナルに到着しても航空会社ごとのチェックインカウンターの場所は異なりますし、距離が相当離れた場所で降車されますと、大変不便です。
また、ロングの場合は間違っても羽田・成田空港まで一般道のみで行かないようにしましょう。
エリア外の場合、帰りは人を乗せないこと
ロングの営業となると、ほぼ地域を越境することが多いと思います。
その際に出てくる問題として、タクシーの営業区域の制限があるという事を念頭に置かなければなりません。
もちろん、行きはOKです。しかし帰りに営業エリア外にも関わらずお客様を乗車させて営業エリア外で送迎させることは運輸規則違反のためNGです。
例えロングで送迎した先が「家の近く」だったとして、お客様を降ろした直後に別の方が「ちょっとそこまで乗せてくれ」と来られても乗車はさせられません。
※但し目的地が営業エリア内へ戻るケースなら乗車可能です。
スピードの出しすぎに気を付ける
ロングの際、いつもよりも売上を多く稼いで気分よく自分自身のタクシー営業区域へと戻る時にやってしまいがちなのが「スピードの出しすぎ」です。
これは帰庫時にも言えるのですが、実はタクシーが取り締まりで捕まったり、事故を起こすケースで特に多いのがこの『帰庫の回送時』なのだそうです。
理由としては緊張の糸が切れて、つい運転もヒートアップしてしまう傾向になるのと、時間帯的にそれほど車が走行していないという事(深夜早朝など)が挙げられます。
ロングが出やすい条件って?
ロングのお客様は、そう滅多に出会えるものではありません…と上段で申し上げましたが、それでもタクシードライバーたるもの「どうやったら出会えるんだ…」という気持ちになってしまいますよね。
朝から晩まで全部ロングでしたー!なんてドライバーはあり得ませんし、おそらくそんな営業は逆に効率が悪くなる可能性が出てきます。
ここではロングが出やすい条件として可能性があるものを、経験を基に少しお教えします。
電車の遅延
予想だにしないのがこの「電車の遅延」です。
特に『運転見合わせ』レベルはお客様にとっては致命的で、目的地までの進路を閉ざされた状態なのです。タクシーはまさに、その隙間に入る救世主的な役割になるわけです。
もちろんある程度時間が経過すればラジオやネット、SNSなどで情報が拡散されて駅のタクシープールはタクシーで大混雑になります。
しかし、そういう時にはいち早く情報をキャッチして駅のタクシープールに行ってみるのも良いかもしれません。全てのお客様がロングとは限りませんが、確率はいつもよりは高いかもしれません。
深夜の利用
深夜の終電以降の利用は、ロングのお客様は多くなる傾向があります。
特に金曜日などは週末ですし、繁華街で盛り上がった後どうしても家の布団で寝たいというお客様はお金を払ってでもタクシーに乗って隣県の家まで帰る!なんて方も多いのです。
また、タクシーチケットを利用する方もいらっしゃいますので、複数人乗車して、ひとりずつ別の場所で降りて…最後の方はロングみたいなオチも!
終電後のターミナル駅はタクシープールが大混雑しますが、気長に待つか、流してみるか、アプリを取るかは自由です。
報道関係
報道関係者がタクシーを利用することもあります。
タクシー会社によってはテレビ局から配車を頂くするケースもありますし、タクシードライバーがテレビ局周辺に待機することもあります。(一部の迷惑行為として問題になっている事も事実なのですが…)。
報道関係者は、事件現場へタクシーを走らせるケースや、関係者を自宅まで送迎することもあります。
そうなるとロングはおろか、場合によってはハイヤーのように“一日付きっきり”となることも稀にあるそうですよ。
大型病院
大型病院では、通院される方のみならず、退院された方などはまだ健康面の不安もありますので、タクシーに乗車された際にそのまま遠方のご自宅まで送迎することも多くあります。
また病院という場所柄、急患など突然の際は急いで出向かないといけないことから、タクシーは送迎時に利用が多いのです。
ホテル
大型のホテルなどでは、チェックアウト後にそのまま荷物を持って空港へ行く方も多くいらっしゃいます。
特にインバウンド需要が復活した昨今は配車アプリやキャッシュレス決済を利用して乗車ができることから外国人観光客の方がタクシーを乗車される機会が多くなりました。
タクシー閑散期と言われる2月でさえも、春節で多くの中国人観光客が訪れたこともあり、タクシーの利用が高かった印象です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ロングのお客様はそう出会えるものではありませんが、やはりタクシードライバーとして転職をしたからにはお乗せしたいですよね。ヨダレが出そうになる気持ちもわかります。
しかし忘れないでほしいのは、ロング(長距離送迎)であろうと、チョイ乗り(短距離送迎)であろうと、そこにいるのはお客様です。お客様に変わりないのです。
クレーム事案で、「近距離だったのか、行先を告げたらタクシー運転手に舌打ちされた」という事を未だに聞きます。
そんなことをするのは一部の方だけだと思いますが、大変にレベルの低い内容だと思います…。
常に対等で平等な接遇を心がけ、懇切丁寧な対応をして快適な時間を過ごせるよう努めてまいりましょう。