首都圏の街中で走るタクシー車両はここ数年、ワゴンタイプが主流になったと思いませんか?
車内が広めに設定しているタクシーなだけあって、多機能搭載でお身体の不自由な方にも利用可能なクルマとなっています。
福祉的機能を搭載したタクシーに関しては、東京特別区に限ってドライバーに研修を必須としているのですが、この度新たに必須の地域が誕生しました。
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神奈川県タクシーセンター「UD研修必修化」スタート
神奈川県内のタクシー営業・運営適正化を図る「神奈川タクシーセンター」ではこの度、県内のタクシー事業者が採用するすべての養成・新任タクシードライバーに実施を行う新規講習に新年度からUD(ユニバーサルドライバー)研修を採用した「交通バリアフリー講習」を必修化しました。
県内のタクシー利用者で高齢者や障がい者などの移動制約のある方を含むすべての方に対して的確に対応できる知識と技術の習得を図るのが狙いです。
神奈川トヨタが協力
今回の「交通バリアフリー講習」は大手自動車メーカーの協力なしでは実現できませんでした。
横浜市に所在を置く『神奈川トヨタ』の全面協力の下、講師や会場提供を実施しております。
初講習となった4月10日は午前9時から午後5時まで敢行しました。
講師として講義を行ったのは神奈川タクシーセンターから専任された神奈川トヨタ自動車ユニバーサルモビリティ部部長の都丸美里氏です。
都丸氏は神奈川県タクシータクシー協会のUD研修講師の実績もあることから、同社独自のユニバーサルエスコートマナー講習を監修、講師を務めています。
新年度から「新規講習」に追加される
神奈川タクシーセンターでは、従来の新規講習に比べると今回の必須となったUD研修は少々違いがあります。
もともと会場が神奈川タクシーセンター(横浜市中区)で毎週火曜~木曜の3日間で「安全・接遇」の講習と「地理試験」を受講するというものでした。
しかしこの度、4月から始まった新年度より「交通バリアフリー」が+1日追加され合計4日間の講習を受講することになります。
ちなみに「交通バリアフリー(UD研修)」は毎週月曜日開催となり、会場も神奈川タクシーセンターではなく、横浜市都筑区にあるトヨタビジネスモビリティセンター内の神奈川トヨタ会場にて実施されます。
神奈川県内のタクシードライバー人口「回復傾向」
東京のとなり、首都圏内、全国でも2位の売上を誇る「神奈川県」は現在、新規タクシードライバー人口が回復傾向にあります。
タクシードライバー転職は、一時期コロナ禍の影響で不人気な面もありましたが、ここにきてIT、DXの進歩により需要と供給バランスの乱れが生じ、タクシー業界も人材を求めているといった状況です。
2022年度は3割以上増加
神奈川タクシーセンターによると2022年度(2022年4月~2023年3月)の新規講習受講者数は神奈川県全域合計で959名であったことが明らかになりました。
これは、前年度比の新規受講講習者が713名であったのに対して246名のプラスとなり、34.6%も増加しています。
神奈川県でタクシー運転手になっても問題なし! その理由と他県との違いを解説[2022年7月26日更新]
また、2019年の新規受講講習者は993名であったため、コロナ禍前と比較するとギリギリで届きませんでしたが、まぎれもなくタクシードライバー入社人口の回復傾向を見せております。
各区域で異なる「営業スタイル」
神奈川県のタクシードライバーは、神奈川県全域を営業出来るという訳ではありません。
実は神奈川県のタクシー営業区域は以下の5区域(神奈川運輸支局)に分かれております。
▼京浜交通圏
横浜市、川崎市、横須賀市、三浦市
▼県央交通圏
藤沢市、茅ヶ崎市、平塚市、伊勢原市、秦野市、相模原市(旧津久井町、旧相模湖町、旧城山町、旧藤野町区域を除く)、大和市、座間市、海老名市、綾瀬市、厚木市、寒川町、大磯町、二宮町、愛川町、清川村
▼津久井交通圏
相模原市の一部(旧津久井町、旧相模湖町、旧城山町、旧藤野町区域)
▼湘南交通圏
鎌倉市、逗子市、葉山町
▼小田原交通圏
小田原市、南足柄市、大井町、中井町、開成町、山北町、松田町、箱根町、湯河原町、真鶴町
京浜交通圏は東京へも近く、多くの通勤・通学の足が多いことからタクシー乗車率も高くタクシー営収も高額です。
特に横浜市・川崎市は場所に起伏の多い住宅地も多く、その上、オフィス街・歓楽街・官公庁・公共施設など幅広い営業が可能です。
また再開発を行っている地域も点在しており人口減少が囁かれる昨今、新しい街づくりによってタクシーの需要が見込める可能性がかなり高いエリアでもあります。
県央・津久井・湘南交通圏は駅待ち営業、無線配車営業がメインとなります。
地域の足となるべく、病院送迎やお墓参り、買い物や公共施設への送迎など多くの機会でお客様がタクシーを利用します。
また少子高齢化が著しい地域は免許返納の煽りもあり、タクシー利用がここ数年多いのも現状です。
場所によっては営業収入に差があるのですが、地域特性や会社の特徴をうまく使うと以外にも高い穴場もあるとか…。
小田原交通圏も同様ですが、国内外有数の観光地「箱根」を有していることからインバウンド需要が復活しつつある昨今、営業収入も多い日は5万円台以上というタクシードライバーもいるという話です。
いずれにしても神奈川県内のタクシー会社では配車アプリ「GO」と提携している事業者が多いことから、現在配車が追い付かないというケースも珍しくないそうです。
これから~Opinion~
神奈川県内のタクシーは、東京都内に比べるとセダンタイプがまだ目立つ印象があります。
それでも神奈川トヨタでは、数年前からUD研修の積極的な取り扱いを神奈川タクシー協会と協力し、行ってきました。販売当初JPN TAXIは車いす乗降用スロープの設置に時間がかかるといった理由から、車いす利用者の乗車拒否問題が発生しており、マイナーチェンジを余儀なくされました(その他の部分もマイナーチェンジしておりますが)。
今回の記事内におけるUDは「ユニバーサルドライバー」の略でしたが、実はUDはもう一つ別の略式があります。JPN TAXIなどの次世代型車両は「ユニバーサルデザイン(UD)」とも呼称され、『お年を召された方や車いす利用の方、妊婦さんや小さなお子様連れの方』など、様々人が利用しやすいタクシーとして今後も国内の送迎を快適にしていくことでしょう。
以前とある神奈川県内のタクシー事業者の社長にお会いした時「県内でもUD研修の必須をすべきだ」と強調されていたことを思い出しました。あれは確か5年ほど前だったと思います。ようやく実現したのだと、きっと感慨深い気持ちになっていることでしょう。