タクシーに関するアプリケーションは、実のところ「配車アプリ」だけではないのです。
近年ではユーザーの多様化に対応するために過疎地をはじめ、都心部でも「相乗り」のサービスを導入し、アプリを経由しての注文を確定することがあります。
今時の言葉でいうところの『シェア』というやつですよね。
今回はその相乗りタクシーアプリのニュースをお届けします。
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タクシー相乗りアプリ「nearMe.」、東京メトロ丸の内線でMaaS実証実験
東京都中央区に本社を構えタクシー相乗りアプリ「NearMe.」を運営する株式会社NearMe(ニアミー)は、2023年4月25日より、東芝インフラシステムズ株式会社と、「東京メトロ」で御馴染みの東京地下鉄株式会社との共同で『様々なサービス提供事業者のスマートフォンアプリで鉄道に乗車することで、「サービス利用+移動」の促進を検証する実証実験』を実施することとなりました。
期間は4月25日から6月25日までの2ヶ月間で、NearMeはサービス提供事業者としてこの実証実験に参画をするとのことです。
タクシー相乗りアプリ「nearMe.」とは?
タクシー配車アプリは数多あれど「相乗り」という機能に特化したアプリはそうそうありません。
それを運営するNearMeは、どんな沿革で、そのようなサービスを行っているのでしょうか。
聞き慣れない方もおそらく多くいらっしゃると思いますのでここで少し解説しましょう。
配車ではなく、相乗り専門
NearMeは上述でも申したように「配車」ではなく、相乗りアプリのサービスを行っています。
2017年7月にNearMeが設立されると、翌年2018年の6月にタクシー相乗りアプリ「nearMe.」サービス開始。
『みんなのドアツードア…人のために、地球のために。移動をシェアする、これからの選択肢。』をモットーに、テクノロジーを駆使してNearMeでは、移動手段のあらゆる場面での“もったいない”を解決し、サスティナブルで活き活きとした未来を目指しています。
タクシー以外に様々なニーズに応じた「相乗り」
NearMeでは、タクシー以外にも、様々なニーズに応じた『相乗り』サービスをリリースしています。
タクシー相乗りアプリ「nearMe.」を発表のおよそ一年後の2019年8月に、エアポートシャトル「nearMe.Airport」のサービスを開始し、同年11月にはゴルフ場専用の相乗り送迎サービス「nearMe.Golf」のサービスを開始しました。
また、近年ですと2020年5月、コロナ禍でドアツードアが囁かれる社会情勢のニーズに対応した通勤シャトル「nearMe.Commute」のサービスを開始しています。
NearMeはタクシーに限ったものではなく、その場その場に応じた多彩な『相乗りサービス』をアプリを通じてユーザーのニーズにマッチングさせています。
「デジタル乗車サービス」実証実験
今回NearMeが行う実証実験は、いったいどのようなものなのでしょうか?
人々の動きが活発になってきた2023年、東京都内のタクシー・バス・鉄道などの交通業界ではいよいよMaaS(サービスとしての移動)の再推進に舵を切っています。
実証実験は「デジタル乗車」を主として行います。実施の背景を追ってみましょう。
実施背景
先般日本政府より発表された「マスクの個人判断」や『新型コロナウイルスが感染症法上の位置づけを「2類相当(現在)」から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針を決定』など、国内でもwithコロナ・アフターコロナという思考に移行しています。
このようにコロナ禍は今、新たな局面を迎えていることは誰の目にも明らかなことから、国内ではGWなどの連休を前に国内外問わず人々の移動はここ数年以上に活発になっていくことが予想されます。
コロナ禍で根付いた“ニューノーマル”にどう対応するか
しかしコロナ禍で定着・増加した、「EC、ネット通販の利用」や「リモートワーク」などは、今後も定着しつつあるニューノーマルのライフスタイルとして確立しております。
そうなれば必然的に公共交通機関を定期的に利用する機会は減少していくことでしょう。
【ニュース】コロナ禍の移動をより快適に「日本交通」のニューノーマルタクシー
公共交通機関においては、交通系ICカードの地方での普及率が低い状態が続いています。
またインバウンドの規制緩和が行われ、昨今多くの訪日外国人のお客様が国内の公共交通機関を利用する際、キャッシュレスではなく「現金購入の切符が主な支払い方法になっている(特に私鉄系)点」など、今後、交通業界では快適な移動の実現のために解決すべき課題です。
なおタクシー業界では現在、コロナ禍が拍車をかける形でほとんどの法人事業者がキャッシュレス決済に対応しておりますが、公共交通機関の連携となるとまだまだバス・鉄道などへは派生していない現実があります。
コロナ禍で派生した“ニューノーマル”に交通業界がどう対応するかが、今後注目となります。
QRコードを用いた乗車券
今回の実証実験ではタクシー、バス、鉄道など公共交通機関の利用を活性化させることを目的にしたもので、QRコードを用いた乗車券を使用します。
実証実験期間中は羽田空港を出発地としてエアポートシャトル「nearMe.Airport」をご利用いただくお客様を対象に、東京メトロ丸ノ内線のQRコード乗車券(1日乗車券)をNearMeのアプリおよびサービスサイトを通じて取得することによって、利用が可能となります。
なお東京メトロ丸の内線では「nearMe.Airport 丸ノ内線QR 乗車券パック」として販売し、羽田空港から宿泊地や観光地までのドアツードアでの移動が可能になります。
しかし実際はそれだけでなく、東京メトロ丸ノ内線沿線内を1日乗り放題となることにより、ビジネスシーン、プライベートシーンを問わず移動をお楽しみいただけます。
※QRコード乗車券単体での販売は行わないとのことです。
丸の内線ではNearMe以外のコラボも
今回の実証実験では多角度からの組み合わせのコラボでQR乗車券パックが販売されるのも魅力です。
東京メトロ丸の内線ではNearMeの相乗りタクシー利用サービスと、リアルワールドゲームスが展開する位置情報アプリとのコラボを行い、スポット巡りイベント「ビットにゃんたーず 丸ノ内線江戸巡り ~目指せ!徳川埋蔵金~」を販売。
また、コワーキングアプリのvia-atとのコラボで展開するワークスペース利用サービス「via-at 丸ノ内線」も販売します。
ちなみに実証実験期間中は丸ノ内線新宿駅、四谷三丁目駅、淡路町駅、御茶ノ水駅、池袋駅(中央通路東改札のみ)の自動改札機に読み取り用タブレットを設置して対応するとのことです。
読み取り用タブレット非設置駅では駅係員がデジタル1日券を確認し対応を致します。
MaaS実証実験として
今回のコードを用いて自動改札機を通過する新たな乗車サービスの実証実験は、東京メトロでは初の取り組みとなります。
これにより、2019年頃よりタクシー・バス・鉄道・シェアサイクル・レンタカーなどの交通業界や自動車業界で“移動の革命”として一つのサービスでとらえるMaaS(Mobility as a Service)への期待が再燃しています。
国土交通省も推しの推進事業
もともと国土交通省も2019年に日本版MaaS推進・支援事業を立ち上げ、モデル形成を確立すべく「先行モデル事業」を19事業に選定して支援を行いました。
そして翌年2020年も地方の過疎地などを含め、地域特性に応じたMaaSの実証実験を行う36事業を選定支援を行っていましたが、新型コロナウイルス感染拡大が尾を引き、各地のニーズに沿った形での支援になっていたのは想像がつくと思います。
昨年の終盤から現在まで、インバウンド復活やコロナ禍の収束もあって、東京都内のタクシー需要は初乗り運賃値上げとアプリ配車注文が拍車をかけ、V字回復を達成。
サービスとしての移動=MaaSの都内需要が日に日に増していく中で、公共交通機関各社や付随して利用頻度の高いサービス・レジャー事業についても、今後一層利便性向上へ対策が待たれます。
これから~Opinion~
QR乗車券と沿線サービスとの利便性を検証する今回の実験は、まさにMaaS実証実験と言っても過言ではありません。
タクシーなどの各公共交通機関やレジャー・サービス事業との連携はコロナ禍では到底成しえなかったことで、このような企画が実証実験でも開催できるというのはありがたいことだと思う限りです。
さて、先日新宿駅で訪日観光客が切符売り場で「クレジットカードが使えない」と嘆いていたのを思い出しました。(某私鉄の切符売り場での出来事です。JRでは指定席券売り場で使用可能です。)
キャッシュレス決済などのニューノーマル化は各公共交通機関の中ではまだ利便性に差があり、タクシー業界はかなり早い段階で行っていましたが、鉄道やバスを見渡すとIC系カードという国内限定の「中間」を通すため、海外から来られた方へのニーズに応えるにはもう少しシステム的に時間がかかるのではと感じました。
なお大阪では2025年の大阪万博へ向け『南海電鉄』と『大阪メトロ』の一部でクレジットカード(Visaタッチ決済)や顔認証、さらにQRを自動改札機にかざすだけで電車に乗れる取り組みを行っており、今後展開を全国に拡大できることを期待したいです。