年の瀬の慌ただしさも2月になればもう昔話のように聞こえます。
様々な業界では「にっぱち」なんて言葉がありますが、タクシー業界はどうでしょうか。
とかく昨年11月の初乗り運賃値上げ(約14%アップ)によって、大きく営業収入の変動が起こりました。
その内容は、タクシー事業者の現場でも「これまで経験したことがない」と口を揃えるほどの、大きな飛躍でした。
さて、この度12月の1日あたりの営業収入平均が発表されましたので、ご紹介することにいたしましょう。
見出し
タクシー東京都区内営業収入「6万円」の大台に!(12月実績)
2022年12月度の原価計算対象事業者の輸送実績がこの度東京ハイヤー・タクシー協会より発表されました。
東京特別区・武蔵野市・三鷹市を営業区域とするタクシー事業者(対象30社:2,642台)の実働1日1車あたりの営業収入(日車営収)はコロナ禍以前の2019年同月に比べなんと21%増の6万6,552円を達成しております。
コロナ前と比較して21%増に!
増加率は前月に比べ4ポイントも上昇し、コロナ禍の前年(2019年)との同月と比較となれば約21%増となります。
各営業所へ取材を敢行しても担当者の方や運行管理者の方から出る言葉や「これまでにない数字」や「経験がない」という驚きの声やタクシードライバーからも「コロナ禍前の営業方法で通常通りの営業方法で、7万円以上のドライバーが普通にいる」「10万円超のドライバーなんて珍しくなくなってる」という、にわかに信じがたい声まで聞こえるくらいです。
多摩地区も増収!
また、東京といえば特別区・武三交通圏だけではありません。
お隣の多摩地区【北多摩交通圏:立川市・府中市・国立市・調布市・狛江市・小金井市・国分寺市・小平市・西東京市・昭島市・東大和市・武蔵村山市・東村山市・清瀬市・東久留米市】、【南多摩交通圏:八王子市・日野市・多摩市・稲城市・町田市】、【西多摩交通圏:青梅市・福生市・あきる野市・羽村市・西多摩郡(瑞穂町・日の出町・奥多摩町・檜原村)】でも営業収入(日車営収)が増加しています。
全多摩地区のタクシー事業者(対象15社:822台)の実働1日1車あたりの営業収入(日車営収)はコロナ禍以前の2019年同月に比べ2.9%増の4万9,820円を達成しており、前月比でも0.9ポイントの増加となっています。
関東7県も一部除き増額!
- 東京都内だけでなく、近隣はどうなっているのでしょうか?関東7県のお話しを少しさせていただくと、神奈川県・千葉県・埼玉県・群馬県・茨城県・山梨県で前年同月(2021年12月)と比較して増額となっていることが関東運輸局の調べで明らかになっています。
なお、神奈川県内では京浜地区で5万円台の大台に乗っており、県下の相模・鎌倉地区でも4万8千円台という高水準をたたき出しています。▼主な隣県の輸送実績は以下の通りです(2022年12月) - 神奈川京浜地区…日車営収→51,253円【前年比率8.7%増】
- 相模・鎌倉………日車営収→48,065円【前年比率3.0%増】
- 小田原……………日車営収→36,982円【前年比率18.0%増】
- 千葉(A)………… 日車営収→41,488円【前年比率4.8%増】
- 千葉(B)………… 日車営収→30,012円【前年比率6.7%増】
- 埼玉(A)………… 日車営収→44,264円【前年比率0.6%増】
- 埼玉(B)………… 日車営収→29,459円【前年比率4.3%増】
※ちなみに、栃木県のみ前年同月比マイナスとなってしまったとのことです。
なぜ、ここまで上がったのか?
東京特別区・武三地区を例にみますと、コロナ禍以前の2019年の同月と比べ、約21%の増収になりました。前年比と比べても20.8%の増収ですから東京のタクシー業界としては「V字回復」と言っても過言ではありません。
しかし、なぜこのような事態が起きたのでしょうか?
11月の『運賃改定』が影響
まず大きな効果と言えるのが2022年11月14日に敢行された東京特別区・武三交通圏における『初乗り運賃改定』の影響が大きいでしょう。
以前の初乗り運賃に比べ約14%の値上げを行い、当初“タクシー離れが起こるのでは”さえ懸念されましたが、そのような影響は全くなく以前同様にタクシー利用があったことが最大の要因ではないでしょうか。
社会情勢を見渡せば物価上昇や石油高騰もあり、特にLPガスを燃料としているタクシー車両はもろに打撃を受けるのは必須です。
しかしながら運賃値上げを行ったにも関わらず、お客様の数が減ることなく繁忙期を迎えられたことも大きかったと言えましょう。
タクシー事業者各社やタクシードライバーも、この運賃値上げの一件には驚きを隠せないようでした。
タクシー事業者の収益アップはもちろん、タクシードライバーの収入に直結する問題だけあって、今後のタクシー業界の動向に目が離せませんね。
アプリの恩恵は大きい
ここでタクシードライバー目線のお話しを。
2019年と同じ営業方法をしたところで、売上の天井は目に見えています。
たとえ今回のような「初乗り運賃値上げ」を敢行したところで、もしかすると微々たるものであったのかもしれません。
では、2019年と2022年の営業方法での大きな違いとは一体何でしょうか?
答えはずばり「配車アプリのメジャー化」に尽きます。
お客様でも配車アプリのダウンロード数が圧倒的に増加し、タクシードライバーへ転職される方、あるいは現場で働く方でさえも「配車アプリの現状がどうなっているのか」を気にされるほどです。
“●●交通のタクシーはどこの会社の配車アプリなのか”…“どの配車アプリ利便性が良いのか”…“すぐ来てくれるのか”…“優れたサービスがあるのか”など、それほどユーザーの利用頻度によってタクシーの売上も当然ながら影響を及ぼすのは容易に想像できますよね。
実はメジャーどころの配車アプリだけでなく、タクシー会社自社で提供している配車アプリや地方のタクシー協会が取り組んでいる配車アプリなど、国内では外資系配車アプリも含み多岐に渡ります。
それらの恩恵なくしては、今日のタクシー売上アップは皆無と言ってよいでしょう。
大手アプリ2社が過去最多ダウンロードと配車記録を更新
配車アプリ大手…なかでも有名な事業者が『GO』と『S.RIDE』でしょう。
『GO』は東京タクシー大手四社「日本交通」の子会社「株式会社Mobility Technologies(通称:MoT)」が手掛けるテレビCMでもおなじみのタクシー配車アプリで、現在全国にもそのネットワークを広げており、利便性の良さから現在1,000万ダウンロードを達成しています。
サービス開始からわずか2年たらずの快挙であり、他社の追撃を許さない躍進を遂げています。
また、『GO』と同じく現在全国的にネットワークを広げており、特に東京都心の大手系、準大手タクシー事業者との連携が強い『S.RIDE』もこの度、繁忙期の2022年12月に配車件数が過去最高記録となる前年同月比の約2.3倍の配車件数を達成することが出来ました。
『S.RIDE』(S.RIDE株式会社)はソニーグループと東京タクシー大手四社の『国際自動車(km)』を筆頭に都内タクシー事業者である『グリーンキャブ』、『寿交通』、『大和自動車交通』、『チェッカーキャブ(2021年4月1日より東京無線協同組合が業務提携開始)』などの合弁企業です。
もともと『S.RIDE』では2022年は4月から月間配車件数の更新が続いており、「車種指定」や「予約配車使い放題」といったサービスが付いた課金制のプレミアムサービスが好評となっております。
また、10月には国際自動車(km)及びタクシー車窓モビリティサイネージサービスを展開するニューステクノロジー社との共同企画として、2022年10月24日~11月6日まで50台限定、東京都内期間限定で「貞子タクシー」を走行し話題となりました。
「インバウンド」復活と「withコロナ」
ここにきて嬉しい話題もあります。
規制緩和によるインバウンド復活が後押しし、訪日外国人観光客の足が戻ってきたこと…そして国内でも旅行やお出かけの動きが活発になってきたことが挙げられます。
後者に関しては、「With コロナ」が世の中に定着しつつあり、行動制限が徐々に緩和された点…つまり人の流れが増えてきた、或いは戻ってきたという点が大きいのではないでしょうか。
そこにきての初乗り運賃の値上げでも「お客様のタクシー離れ」が無かったこと、そしてそのまま繁忙期に入り忘年会や御用納めのシーズンに突入したのも大きかったのではないでしょうか。
タクシードライバーへ転職するなら、まさに“V字回復”した今!
コロナ禍はまだ過ぎたとは言い切れませんが、行動制限の解除やマスクの制限付きの着用など、徐々に日常生活に戻りつつある今、このコロナ禍で失われた3年を取り戻したい方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
未経験からお仕事を始めるのは勇気がいります。年齢を重ねれば重ねるほど人間は蓄積された経験が時に仕事に活かされるときもあれば、時に自尊心や執着に変わり、なかなか一歩が踏み出しにくくなっていき「リスタート」も難しくなるものです。
しかし、タクシードライバーは違います。やった分だけあなたの収入になりますし、様々な年代や性別の方が働いています。そして、ハンドルを握って一期一会の出会いでお客様を目的地まで快適にお届けする『接客業』として、今やセカンドキャリアとしてのお仕事としてではなく、新卒入社も珍しくない職種となりました。
コツさえ覚えればこんなに楽しくてハマるお仕事はありません。
タクシードライバーは雨にも濡れることなく、しっかりと休みも取れる。それでいてちゃんと稼ぐことができる。
タクシードライバーは実はあまり知られていない『安全運転を心がければ楽しくてオイシイお仕事』なのです。
withコロナで行動制限が解除に向かい、インバウンドが復活し、初乗り運賃値上げでアプリ配車が多発する今、タクシーは以前にも増して大きな可能性と収入を得られますし、何より「ありがとう」と言っていただけるやりがいのあるお仕事です。
是非タクシードライバーへ転職するなら、まさに“V字回復”した今がチャンスですよ!